2222壊れた魔术师と勇者の话
13,066文字
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壊れた魔术师
何がいけなかったんだろう。
この前から俺の头にはその言叶だけがぐるぐると涡巻いていた。
こうなる前に、できることはあったはずだった。
こうなる前に、前兆があったはずだった。
こうなる前に、彼女を気遣ってあげればよかった。
だけど、そんな后悔では起こってしまった结果は変わらない。
俺がやることはただひとつ。
勇者として彼女を倒すだけだー。
足を踏みいれた馆はとても老朽化していた。崩れないのが不思议なくらいだ。恐らく彼女の魔法が闻いてるのだろう。
俺の名前はレイヴ。王国から正式に认められた勇者である。
この世界は魔族に侵略されていた。どうしようもないほど追い诘められ、人类灭亡までカウントダウンが始まるかと思われたとき、俺は勇者に选ばれた。
はじめは唐突で信じてもいなかった。だが、勇者に选ばれた翌日から一般村人だった俺の力は上级魔族の首さえ素手で引きちぎれるほどまで上がっていた。
その后俺は剣を学び、勇者として旅をしていた。
一人旅ではない。幼驯染みの魔术师が一绪だった。途中から回复魔法が得意な王国の姫も仲间になった。
何度も苦难を乗り越えて、俺は人类が夺われた领土の8割を夺い返していた。何度も苦しい戦いをしていくうちに、俺と姫様は互いに惹かれあい结婚を前提に付き合い始めていた。
戦闘としても、人生としてもまさに最高の时期ーそう思っていた。
幼驯染みの魔术师が、あんなことをするまでは。
古びた馆を探索し、いくつかの扉を潜った先で、ついに俺はこの事件の元凶を见つけた。
黒のニーソックにミニスカート、薄手の生地の衣类の上に俺が买ってあげた黒いローブを身に付けて、トレードマークの魔女帽を被った姿。何度も何度も见てきた、见惯れた姿。その顔は帽子で见えなかったが彼女は俺を见ると微笑みを浮かべていった。
「ぁ、やっときてくれたんだぁ……」
自分の行为を棚にあげ、俺との再会を喜ぶ彼女。
彼女こそ、俺と共に旅をしてきた幼驯染みの魔术师ーレミィだった。
ことの発端は三日前。俺と姫様が付き合いはじめて1週间がたとうとしたとき、それは突然起きた。
姫様が魔族に拐われたのだ。
そもそも、彼女には退魔の魔力と言う特别な魔力があった。魔族にとって最大の弱点ともいえる特异な魔力を持った彼女は魔族にとって邪魔な存在だ。彼女をつれた俺たちは何度も魔族とぶつかり、この度にある时は命を狙われ、ある时は连れ去れかけた。
その度に俺たちは魔族とぶつかり迎撃していたのだがーその日ついに拉致されてしまったのだ。
その原因が、彼女ーレミィである。
その日レミィはあろうことか、俺の食事に睡眠薬を混ぜ、更に睡眠の魔法をかけた上で彼女の后ろから魔力封じの手锭をかけ、彼女を魔族に引き渡すと自らも姿を消した。
はじめは魔族に操られたのかと思ったが调査を続けていくうちに、彼女がちょうど一週间前ーつまり俺と姫様が付き合いはじめてからずっと、魔族と秘密裏にコンタクトをとり、绵密な计画をたててたことがわかった。
「ごめんね……。すぐにでも话したかったんだけど……色々ごたついてて。だから、见つけてくれるのを待ってたんだ……。すごい久しぶりだよね?レイヴと二人きりで话すの……。」
「レミィ。……姫様はどこだ?」 本文来自
「……。探せばいるよ。この馆のどこかに。捕虏として扱うって言う魔族との约束だから。法律に则った待遇は、约束する。」
姫様と俺が口にしたとたん、目に见えて彼女の态度が変わった。苛立ちと、心のそこからどうでもいいと言うような态度。その态度から予测していたことではあったが、动机がすぐに俺だと理解した。
レミィは昔から俺なんかよりずっと头がよかった。だが同时にどこにいくにしても彼女は俺についてきた。俺が勇者になると决めて剣の修行を始めると一年もしないうちに彼女はそれまで学んだこともなかった魔法を勉强し、仅か一年もしないうちに村一番の魔法の使い手となり王国でも10人しか选ばれない最强の魔法使いの称号"大贤者"を得た。
けど彼女は俺ちょっと影で俺の阴口を叩いた村人に大ケガを负わせたり、俺に喧哗を吹っ挂けてきたチンピラを半杀しにする危うさもあった。
俺に嫌がらせをしてきた政治家は数日で失脚し、俺をバカにした记事を书いた记者は后に勤めていた会社が破産して倒産した。
彼女は俺のことになるととたんに极端な行动に出るアブナイ节があるのだ。そしてそれはきっと俺への爱情表现であったのだ。でも俺はそれに気づかないふりをしつづけ、ついには姫様と结婚してしまった。彼女はそれに耐えられなかったのだろう。
この一件は、必ずしも彼女のせいではない。少なからず俺が原因だ。けど、起きたことはもう変えられない。
「ー。王国からの最终通告だ。今すぐ姫様を无伤で引き渡せ。それなら、命を夺うような処罚は与えない。さもなくばー」
「别にいいよ」
くだらない、と吐き捨てるように彼女はいった。
「姫様も、私の命も、王国も世界もどうでもいい。ねぇ、レイヴ?もし姫様を无伤で引き渡したらレイヴは私と结婚してくれる?ずっと一绪にいさせてくれる?」
「それはー」
それは、彼女からはじめて向けられた告白だった。耐えられなくて、辛くて、彼女にここまでさせるほど俺は彼女に爱されているのだろう。それだけのきもちを俺に向けてくれてるのだろう。そのことはすごい嬉しい。ーでも。
「ごめん。それは、无理だ。俺はもう、姫様を选んでしまったから。」
「……。そう、だよね……。レイヴはそういうよね……」
そういって俺から目をそらして顔をうつむくレミィ。あぁ、本当に。自分はどうすればよかったんだろう?どうすればこんな结末を迎えなくてよかったんだろう。
「ーレミィ。王国からの依頼だ。もし姫様を无伤で引き渡す条件をお前が饮まない场合、俺がお前を杀す约束になってる。」
「……。」
返事がない。动かない。うつむく彼女を视线にとらえながら俺は静かに剣を构える。せめて、苦しませないように一撃で。
「……ーこれまで、ありがとう」
俺は彼女の心臓をめがけ剣をつきいれるため、走り出そうとー
「……じゃあ、レイヴの间违った気持ちを正してあげないとね?」
「ーぇ」
俺が踏み込むより早くレミィはローブを広げた。黒いローブの下から魔术师としての衣服に包まれた彼女の柔肌が、剣を突き立てんとする俺を迎え入れるかのように広げられる。そして同时に鼻腔にふわりと、甘い匂いが届いた。嗅いだことのない、けれど决して不快ではない、甘く、浓い匂い。
「なんー……っぁ……」
なんだこの匂いは、と闻く前に俺のからだに异変が袭った。背筋にぞわぞわとした快楽が走ったと思った瞬间全身から力が抜け、走り出そうとしていた俺の体はそのまま前に倒れこんだ。辛うじて剣を杖がわりにすることで持ちこたえたがそれでも全身が一切不快感のない倦怠感に袭われ、力を込めるのが难しい。何が起こったかを思考しようとした头もまるで甘い匂いの糸に络めとられたように回らない。头がぼんやりして、方向感覚さえ失いそうなる。この心地よい脱力に身を任せたい诱惑に刈られる。 本文来自
「なにを、し……た……ぁ………」
なんとか质问をしようとしてレミィを见た瞬间どくんと心臓が波打った。彼女は幼驯染みで、一绪に冒険して。裸とは言わなくても服を着た彼女なら见惯れたはずなのに。ドキドキが、止まらない。
魔术师の衣类はどれも露出が多い。曰く、魔力の流れが感じやすいとかなんとか言っていたのを覚えている。レミィのローブの下の衣装もまた、例に漏れず露出が多い。ミニスカートは少しでも动けばパンツが见えてしまいそうで、ニーソックとミニスカートのあいだから见える真っ白な太ももが黒を基调にした服装のせいでより强调される。肩もお腹も出していてそのどれもが男の俺なんかと比べてもとても柔らかそうで魅力的に见える。そしてなにより、彼女の胸だ。
10歳くらいの顷から大きくなり始めたレミィの胸は、10年たった今ではローブの上から膨らみがはっきり见えるほど彼女の胸は大きくなっていた。その上でその魅惑的な谷间を见せつけるような布生地は大きさだけでなくその胸の柔らかさすら视覚で诉えてくるようだった。
俺だって男子だ。彼女の大きな胸をみて思春期の顷はオナニーをしてたこともある。姫様とであってからはそんなことしてないが、それでも今改めて见せつけられると、それはあまりに魅力的で、妖艶だった。
「くすくす。どうしたの?……剣突き立てなくていいの?ほら、おいで」
「っぁあっ……まっ、やめ……しゃべ、るなぁ……」
匂いだけでない。声も甘く脳に络み付くように闻こえる。匂いもいっそう浓くなり息をするだけでも声を闻くだけでも全身にピリピリと快感がはしり、更に力が抜けてしまう。
なんだ、これは。
なにをされたんだ、俺は。
「戸惑う顔、かわいいね……レイヴ……。」
困惑する俺をよそに彼女はそんな独り言を呟くとそのままその场で一回転する。より甘い匂いが强くなりからだに走る快楽の电撃がいっそう激しくなる。その快楽に耐えきれずついに膝をつい倒れをみてレミィは自慢げに语りだした。
「これね、サキュバスの魔法なの。フェロモン?メルトアウトっていうとっても强力な魔法……。男の人が嗅ぐといろんな効果があるの。精力増强、色気への耐性低下、匂い出してる人を好きになったり、発情しちゃったり、敏感になったり……思考を邪魔しちゃったり。ほんとにいろんなえっちな効果がね……??」
「サキュバスの、魔法……だと……!?」
「そう。お姫様を差し出した交换条件で好きな魔族の魔法を教えてくれるって言われたから……サキュバスの魔法、おしえてもらったの。サキュバスは、わかるよね?」
知っている。俺たちのメンバーで俺だけが男ゆえにサキュバス系统で狙われるのが一番危険だと教えてくれたのはそもそもレミィだ。
そのため冒険では魅了に一番耐性を持つ、姫様をメインにレミィが援护をし、邪魔が入らないように周囲の雑鱼を俺が倒す戦いかたをしていた。故に、俺が直接サキュバスと戦ったことはない。
これが、サキュバスの魅了魔法。头が痺れ、力は溶け落ち、桃色に全身を染め上げられるような感覚。そのうえどこまで言っても不快感はなく、それゆえにどんどんとこの感覚に溺れてしまいそうになる。
「レイヴは魅了に全く耐性ないもんね……。いつも私とあの女で倒すようにしてたし、魅了もちは最优先で杀してたから。ここまでの冒険で魅了なんてなったこと、ないもんね……。どう?はじめての魅了魔法の感想は……くすくす……??」
「ぅ、あぁぁ……しゃ、喋るなぁっ……声、だけでも、これっ……」
「うん、わかるよレイヴ……。声だけで気持ちいいんだよね?闻いてるだけで背筋ぞわぞわして、头ぽわぽわして、うまく头、回らなくなるんだよね??でも……私が教えて贳った魅了魔法は、ひとつじゃないんだよ……??」
すっ…とレミィがポーズをとる。脇を见せ、おっぱいやお尻のボディラインを强调するような扇情的なセクシーポーズ。その姿に思わず目が钉付けになる。そしてー
「まずこれが初级の魅了魔法…えいっ??」
「ぇ……?ぁ、あああああ!?」
レミィが、とても可爱らしくウインクした。
とたんにハートが弾けレミィからハートの形をした魔力のオーラが流し込まれる。そのハートが俺のからだに入り込む度にピリピリと甘い痺れが全身に走り回る。目の前のレミィがより一层可爱くみえてドキドキが止まらない。
「これが、チャームウインク……だよ??低级のサキュバスも使ってくる魅了魔法……。レイヴくらいの戦士になれば魅了耐性がついてこれくらい耐えられるんだけど……レイヴに耐性はついてないもんね……??ほら、もう一回……ぱちっ??」 copyright
「なぁっ??ぅ、あぁぁ……??」
「レイヴはこっちのポーズの方がいいかな……?ぱちっ??それともこっち?……ぱちっ??」
レミィが、ポーズを次々と変えながらウインクをする。胸を强调してたり、足をみせつけるようなポーズだったり、どれも妖艶で可爱らしいポーズ。そして决まってポーズをとりおわるとチャームウインクを飞ばしてくる。
レミィはただウインクをしてるだけ。そして俺はそれをみてるだけ。なのに、まるでからだの内侧から抚で上げるような快感が全身を袭ってくる。その上、ウインクをみればみるほどレミィにどんどん见惚れてしまう…。
柔らかそうで大きな胸が揺れる度にドギマギし、彼女がポーズを変える度にどうしても视线がみえそうで见えないスカートに惹き付けられる。
可爱い。とにかく、レミィが可爱い。
思考がレミィで埋め尽くされる。兴奋で息が荒くなる。レミィのことしか考えられなくなりそうなのを必死で耐える。
「ふふっ……顽张るねレイヴ……。私はそういうレイヴの顽张り屋さんなところ、好きだよ……??」
「あぁぁぁあああっ!そういう、ことを……言う、なぁ……!」
『好き』。
レミィにそういわれただけで全身にぞわりとした刺激と圧倒的な幸福感に袭われる。頬が缓むのを必死に耐える。反撃とか、攻撃とか、そんなのを考える余裕はなかった。自分の心と戦い、冲动を押さえ込むのだけで必死だった。
「じゃぁ次の魔法いくね…。中级のサキュバスあたりからよく使ってくる魅了魔法なんだけどね…」
必死な俺を他所にレミィは楽しそうにそう告げると人差し指と中指を自身のぷるぷるの唇にもっていく。そこからどんな动作を行うのかは明らかだった。
「ん……chu??」
「ぁ……」
可爱い。あまりに可爱すぎる投げキッス。
来るのがわかってたのにその可爱さに见惚れ、警戒も何もかもを忘れて惚けってしまう。
头のなかで何度も缲り返される投げキッスの动作。
その妄想にとらえられた俺は…投げキッスと共に放たれたハートがふわふわとゆっくりとした轨道で、けど确実に自分に近づいてきてることにすら気づかなかった。そして…ハートがぽわんと、俺に当たって弾ける。
「ひっ……ぁ、あ……??」
そして今度の魅了魔法の効果は、絶大だった。
ハートが弾けた瞬间、思考は完全にフリーズした。なにも考えられなくなった。音も、匂いも、视覚も、あらゆる感覚がレミィを感じることにだけ使われ、それ以外に使われなくなる。必死に押さえ込もうとしてた心から「すき」が溢れだし、それ以外の感情が恋慕の浊流に呑まれて押し流されていく。
「あはっ……??効果觌面だね……??かわいいよ、レイヴ……??もっといじめたくなっちゃう……??」
頬を赤めらせ、サディスティックな笑みを浮かべるレミィ。俺が始めてみる彼女の素顔。だが、それさえもう异常なまでにかわいく、きれいで魅力的に见える。声を出したら「すき」が漏れそうで、ただ一度でも「すき」が漏れたら大変なことになりそうで。俺は必死に口を开けないように脱力したからだに无理に力をこめて、耐えた。
しかし、それを许すほど彼女は甘くない。
レミィは数歩前へ歩き俺へ近づく。
剣を振れば届く距离だ。确実に彼女の首をとらえられる距离だ。けど、俺にそんな余裕はない。
彼女が近づく度にあの魅惑的な柔らかで真っ白な果実がぷるんと揺れ、その揺れと共にその豊満な果実から彼女の匂いーフェロモン?メルトアウトが一层浓くなり、より脱力を诱い、より恋心を煽ってくる。とにかく、剣なんて震えない。なんとか隙をみつけて逃げなければならない。必死に俺のあたまの、仅かに残った理性が警钟を鸣らす。
それでも、俺の足は一歩も动かなくて。
それでも、俺の视线は彼女からはずせなくて。
それでも、俺の鼻は彼女のフェロモンを嗅ぎつづけて。
それでも、俺の耳は彼女の声しか闻こえなくて。
それでも、どうにかしないといけない筈なのにー
「はい、ぱふん??」
「あ、ぉあ、ひ……??」
声になってない悲鸣が、俺の口から溢れた。
レミィは限界まで近づくとその魔性の胸の谷间に俺の头を招き入れ、包み込んだのだ。
柔らかでしっとりとしたおっぱいが俺の肌に吸い付いてくる。抜け出そうと首を动かすと吸い付いていたおっぱいが名残惜しそうな感触を残しながら离れ、すぐさま次の乳肌が顔にくっつく。魔乳を味わえば味わうほどその快楽と共に力を夺われ、同时にもっとこの谷间に顔を埋めたい、抜け出したくないと言う欲望が急激に膨らんでいく。
「ほら、レイヴのお顔、私のおっぱい监狱に闭じ込めちゃった……??どう?きもち、いいかな……??」
嬉しそうに、でもどこか不安そうに闻いてくるレミィ。なるほど、确かに此処は监狱だ。
键のかかっていない监狱。抜け出そうとすれば抜け出せるのにその甘いフェロモンが、柔らかな感触が、极上の快楽が。俺の头と心をとろかせ缚り付け抜け出せなくなる魔性の监狱。囚われたものが抜け出せなくなる底无し沼のような监狱だ。
「抜け出そうと暴れていいの???そんなに激しく动くと……くすくす……??大変なことになっちゃうよ??」
レミィの警告。しかし、俺はとにかく逃れようと焦って体を何度もくねらせて逃げようとした。既に冷静な自分を失っていたのだ。
结果としてもがけばもがいただけ何処までも沈み込むようなしっとりとした乳肌を頬や顔に擦り付けるかたちになってしまう。どう体をうごかしても极上の感触が、甘い痺れを脳に送りこみ、体の力という力が抜けてしまう。『とにかく抜け出そう』とする俺の意思を无视しておっぱいから発せられる『もっとここにいていい』という命令を脳が受け取って実行してしまう。いつしか俺の抵抗は抵抗とも呼べないほど弱々しいものになってしまった。
「抵抗しなくても……気持ちよくなっちゃうでしょ……??」
レミィの言う通りだった。一度自ら顔を魔乳に擦り付けることを覚えたからだは危険だと理解しているのにビクビクと体を震わせてしまう。それに、抵抗をやめたことで彼女の、レミィの甘い匂いをより强く意识してしまう。
鼻の奥に络み付くような重くて甘い、それでいて不快感もない、吸えば吸うほど浓密な桃色の雾が头のあちこちを隠して、なにも考えられなくなっていくような感覚に袭われる匂い。危険なのは分かってるのに、なにが危険なのかを思い出そうとすると思考に雾がかかり、酷くこの匂いがほしくなって吸い込んでしまう。そのフェロモンの快感で体がびくつき、力を夺うおっぱいの感触に绊され、気づくと脳内に新たな桃色の雾が现れる。どんどん、考えられることを狭められていく。彼女の事しか、レミィのことしか考えられなくなっていく。
「まだ、ズボンの上からだよレイヴ…??ほら、こうやって……」
「ぇ、ひぇ、なっ、なんでっ…!?」
レミィが指をならすと共にズボンとパンツが一瞬で脱がされた。これもサキュバスの魔法、なのかは定かではないがズボンとパンツがなくなったことでレミィの掌と俺のどろどろの肉棒を隔て、仅かでも快感を抑えていた壁が、なくなってしまった。
彼女の言う通り、まだズボンの上から、しかも指だけでもこれだったのだ。そのまま握られたときの快楽を与えられたら俺が壊れることなんて想像するのも容易いものだった。
でも、俺は逃げることが出来なかった。逃げる力はもう残っていない。仅かに抵抗する力さえ顔を包み込む魔乳とそこから立ち上るフェロモンにとかされてしまっている。
「ほらみて、レイヴ…」
彼女はそんな无抵抗ながらも反抗しようとする俺を知ってか知らずか、胸の谷间から顔をずらすと自分の掌を见せてきた。
黒く、すべすべした手袋を缠った、彼女の掌。
その指一本一本がクラゲの触手のようにくねくね动くそれは、あまりに妖艶で、たちまち俺は目をそらせなくなる。
「ぁ、あー…」
「今からレイヴのおちんちんは私のこの手に包まれちゃうんだよ……??极上の肌触りの手袋に包まれた……とーっても暖かい私のお手々に包まれちゃうの……??しかも……」
もう一本の手で指をならすと彼女の小物入れから一本の小瓶が浮いて出てくる。瓶のなかには蜂蜜のような、みてわかるほどの粘性をもった琥珀色の液体が入っている。その盖が彼女の魔法によってひとりでに、ゆっくりと、俺に见せつけるように开いていく。そしてー
「ぁ……??」
「くすっ…??」
瓶が空いたとたん浓密な『甘さ』が俺の鼻腔を贯いた。この匂い、この甘さ。间违いなく彼女の、レミィのフェロモンだ。しかも、それを何倍にも浓くして浓缩したような重く、こびりつく匂い。それを一嗅ぎしただけで、强烈な甘い快楽が鼻から脳へ、脳から脊髄へ、脊髄から全身へゾクゾクとはしり、気づいた时には俺は変な声をあげていた。
「期待、しちゃったんでしょ……??」
「ちがっ、そんなんじゃ……」
彼女の発言を否定しようと言叶を并べようとするがそれよりはやくレミィは魔法で浮かせた小瓶をさかさにし、その液体を自分の手にまぶしていく。
にちゅ、ぬちゅという粘液の音と共に黒い手袋が液体でコーティングされていく。
その、あまりにいやらしい光景に并べようとした言叶は雾散し、脳内を再び桃色に染め上げられてしまう。あの手に包まれた时の快楽を、その时の光景を嫌でも思い浮かべてしまう。
そして、そんな俺をみてレミィは再びクスリと笑う。
「もうそんなにみて……??やっぱり期待してるのね、レイヴ……??」
「だ、だから、违……そういうのじゃ、なくて……」
「じゃあどうして逃げないの?どうして无理にでも抜け出さないの……?」
「それは、れ、レミィが……おっぱいで、力……ぬけて……」
「まだ言い訳するんだ……??じゃあレイヴにひとつ、质问するね……?」
违う。言い訳じゃない。力がぬかれてどうしようもないだけで、期待なんてしていない。
必死に、自分に言い闻かせるように何度も言叶を思い浮かべる。
そう、俺は期待なんてしていない。逃げられないだけ。そんな、期待なんて。してるわけがー
「なんで、レイヴはそんなに嬉しそうなの……??」
「ーぁ……」
そのレミィの指摘は、俺が取り缮っていた理性のメッキを、引き剥がすのに十分だった。
逃げられないだけ。期待なんてしていない。
いや、そんなのは言い訳にすぎない。
俺は……本当のところ俺は期待してしまっているのだ。
直感的な恐怖心より、想像できる未来より。
レミィが与えてくれる快楽を、期待してしまっているのだ。
王から与えられた命令より、勇者としての使命よりー姫様より。
耐えないと。我慢しないと。快楽に狂わされていく心のなか、必死に理性をかき集めてー
『なんで、レイヴはそんなに嬉しそうなの……??』
「ーぁ??」
彼女の言叶が脳裏によみがえった。
そう、だ。そうだ。さっき、认めてしまったではないか。俺は期待してしまっていたと。逃げようとする心さえ言い訳だと。
もうすでに、负けてしまっているんだと。
心のささえが无くなった途端、俺の理性はがらがらと音をたてて崩れていく。瓦砾となった理性を、快楽と言うレミィの蜜が溶かしていく。
ああ、もう俺はレミィに负けてしまったんだ。もう、姫様よりレミィを优先してしまったんだ。レミィをー好きに、なってー
「ーレイヴ、好きだよ??」
「ーあ??」
心を読んだような嗫きが、とどめになった。
「れ、れみっ??れみぃ??す??すきっ……??俺もっ……す、きぃ……??」
「あはっ??やっと素直になってくれたねレイヴ??腰がくがく自分から振って私のお手手の感触をむさぼって……??そんな可爱いレイヴ、私も……すーきっ??」
「ひ、ぁっ??れみっ??それっ??耳元でさ、さやかれる、とぉっ……??」
「耳元で嗫かれるの、すき、なんだね……??いいよ??もっとしてあげる……??すき??レイヴ、すき??すきだよレイヴ……??だーいすき……??」
落ちていく。堕ちていく。溺れていく。
心のささえを失った俺は、まるで吸い込まれるように彼女の作った快楽でできた堕落の海へ沈んでいく。一度快楽を认めてしまえば、落ちるのは秒読みだ。ジェットコースターが坂道を下るように、俺の心はレミィの思いがままに落ちていく。慌てて这い上がろうとしても、その気持ちが身体を动かす前に新たな快楽が、彼女の嗫きが俺を缚って络めとる。
あまい嗫きが脳の奥に响いて反响する度、头を灭茶苦茶にとろかして好意だけを残していく。
そしてその嗫きと、好意と、快楽があれば人の恋慕を暴走させるには十分すぎる働きをする。
「おっ??おれっ??おれもすきっ??れみぃ、が、すきっ??あっ??だ、だいすっ…きぃ……??」
「知ってるよー……??私もレイヴがすき??だーいすき……??あ?い?し?て?る??」
「あぁぁぁあああっ……??」
好意の过剰摂取。ただただ甘い嗫きを耳から彻底的に注ぎ込まれる。それに溺れて「すき」と伝えれば「だいすき」と返され、「だいすき」と伝えれば「爱してる」と返される。次第に注ぎ込まれる好意も、膨れ上がる恋慕も大きくなって、危険になっているのに、今の俺はそれさえも気持ちよくて。堪らなくて。そして、そんな俺の心と身体に追い讨ちをするように粘液が络み付いた、彼女の暖かな掌が俺の肉棒の弱いところをしつこく虐めぬく。
指でできた狭い轮っかをくぐらされたと思えばカリをそのまま刺激する。亀头を触手のように蠢く指でくにくにと弄び始めれば、それにあわせて気纷れに爪先で裏筋をカリカリと引っ掻く。
先端ばかり责められ意识がそっちに持ってかれた途端、今度は蜜がたっぷり络み付いたその掌で棹を包み込み、さらさらとした手袋の感触と、掌の柔らかな感触と、蜜によりねっとりとした感触の、本来同时に発生しない感触を一斉に刻み込んでくる。
こんな、人とは思えない快楽と、染み込んだ魅了と、爆発した恋慕にのまれた俺は、もうすぐに、射精しそうになってしまって。
「れ、れみっ……??レミ、ぃ……??」
「うん、分かってるよレイヴ……??射精しそうなんだよね…??もう我慢、できないんだよね……??びゅー……びゅーって気持ちいい射精、したいんだよね……??」
レミィがにっこりと笑ってる。押し付けられるのがやめられていた魔乳が再び顔を包んでくる。快楽を受け入れてしまったからか、フェロモンもさっきまでより浓くて、一瞬で思考も视界も桃色の雾に侵食されてしまう。もうなにもわからない。もうレミィしかみえない。もうレミィのことしか考えられない。考えたくない。
「いいよ……??沢山だそうね……??このまま射精すると、もう私の魅了魔法が魂にまで定着して、二度ともとに戻らなくなるけど……いいよね??」
「ぇ??あ??……ぇっ……」
まだ理性が残っていたのか、本能的な何かか。
レミィの言叶に突然、寻常じゃない恐怖心が生まれる。头から血が抜けて、冷静さか戻ってくる。
彼女は何て言った?わからない。ちゃんと闻けてなかった。けど、俺は今何をしてるんだ?
俺はレミィを倒しにきたはずだ。俺は、そう、俺はなにか大切なものを取り返して、谁かの依頼で彼女を倒しにきて。
魅了渍けの头からまるでパズルのピースを集めるように自分の目的や现状を理解していく。少しずつ壊れた理性と心をかき集めて修复していく。だがー
「それじゃぁー」
レミィが、そんなことに気づかないわけもなく。
俺のからだの状态はなにも変わってなく。
そして、レミィが俺の理性と心がなおるのを待つわけもなく。
「イッちゃえ……??レイヴ……??イッて、壊れちゃえ……??」
「いっ……!???」
ぐちゅぅ。にちゅ、ねちゅ。
ぢゅこ、ぢゅこ、ぢゅこ、ぢゅこ。
ぢゅこぢゅこぢゅこぢゅこ。
レミィの手は、どんどん早くなって。
俺の、弱いとこ、的确に、责めて、きて。
头、白と桃色でバチバチと痺れて。
「あ゛??だ??や゛だっ??ごわれっ??ごわれゅ??でる??で、あ゛??ああ゛あ゛ぁっっっ!!」
どくどくっ……びゅるっびゅるるるるるるるっ……
「はーい……??びゅー……びゅるるー……??気持ちいい、気持ちいいね、レイヴ……??」
「が……??ぁ、ひ??あぁぁ……??」
射精した瞬间、头を支配していた恐怖心も、何もかもがどうでもよくなった。気持ちいい。とにかく気持ちいい。こんな、こんな気持ちいい射精あり得ない。そう考えてしまうくらい気持ちよくて。そして、目の前のレミィがその気持ちよさの分すきに成っていく。理性も心も、これまでの记忆さえ精液として吐き出したかのように头のなかも心のなかも全てをレミィでいっぱいにする。ただそれが気持ちいい。
「ねぇ……レイヴは私と结婚してくれる?ずっと一绪にいさせてくれる?」
レミィのその告白はどこかで闻いたことがあった気がした。どこで闻いたのだろうと考えようとして、ーレミィが再び俺の肉棒を握りしめたことですべてがどうでもよくなった。
「うん……する……レミィと、结婚する……から……」
「ほんと?じゃあレイヴは私のことすき?世界で一番爱してくれる?…お姫様より爱してくれる?」
レミィのその言叶はどこか确认してるようだった。だが、俺にはそんなこと関係ない。姫様?谁だっけ?どこのお姫様かなんて知らないが、俺にとっての「姫」はー
「うん…爱してる……??レミィが、一番すき…??」
ー彼女だけだ。
「あはっ……??じゃあこれからずっと…ずーっと一绪にいようね、レイヴ……??」
「もらった!」
冴华が飞びかかってくる。今度グラウンドに持ち込まれれば、完全にアウトだ。
が、冴华はいきなりつんのめり、畳の上に膝をついた。
「なっ、え……?」
冴华の顔に大きな戸惑いが浮かぶ。
倒れた総太郎だが、気を奋い立たせ、すぐに立ち上がって攻撃に移る。
「うおおっ!」
「はっ!」
冴华は慌てて立ち上がる。総太郎は突きを缲り出してゆくが、急いで打ったなんの工夫もない突きであり、冴华相手では避けられてしまう可能性は高かった。
が、冴华はバックステップをしようとして、やはりバランスを崩して倒れかかる。
「な、なんでっ!」
そこに、総太郎の突きが炸裂する。
ドスッ!
「がふっ!」
冴华は悲鸣を上げ、背中から畳に倒れた。
腹に直撃したのだ。充分に腰が乗っていない突きだったが、それでも充分なダメージがあったはずである。
「げほっ、げほっ! くっ、そ、そんな马鹿なっ!」
冴华は立ち上がる。総太郎はなおも攻めかかった。これまでにないチャンスだ。
(ここで决めるんだっ、立て直す隙を与えるなっ!)
総太郎は、ややふらつく脚を必死に动かして前に出ながら突きを连続で仕挂けるが、冴华はそれを軽快にさばいてしまう。さすがに技术は相当のものがあり、クリーンヒットを夺えないが、しかし冴华が隙を见て打ち返してくる攻撃に秘法の気配はなく、総太郎はラッシュで押し続けることができた。
(効いている!)
そのまま攻めてゆく総太郎。突きのラッシュを见せてから、ふいにローキックを见舞う。
ビシッ!
「あうっ!」
冴华は防御しようとするが、一瞬间に合わずに左ふくらはぎのあたりにヒットする。
「ここだっ!」
総太郎は、がくりと冴华の脚が折れたのを见て突きを放つ。クリーンヒットすればトドメになるような重い突きだ。
が、冴华は総太郎の腰を入れた突きをさばきつつ、思い切ったように右足だけで后ろに跳んだ。
総太郎は歯噛みする。
「くっ、焦ったかっ!」
やっとやってきたチャンスだった。倒さねばならないと思ってモーションの大きい技を出してしまったが、结果的に冴华に余裕を与えてしまった。ここはスピードのある刹涡拳などを出すべきであったろう。
が、総太郎もフットワークが充分でなくなってしまっており、足运びの鋭さが必须な刹涡の技をとっさに出せる状态ではなかったかもしれない。
「ふうっ……」
とりあえず総太郎も危机は脱したのだ。それでよしとすべきであると意识を切り替え、ため息をつく。
そして冴华は。さすがに、その顔には动揺が浮かんでいる。
「……ど、どういうこと? どうして、秘法が――」
そう、冴华は秘法を使えていない。
「见えなかったようだな」
「な、なにかしたの?」
「わざわざ教えてやる义理はないだろう。自分で考えることだな」
「くっ……!」
総太郎が冴华の左の钩突きを受けたとき。とっさに右の抜手で冴华の脇腹を突いていたのだ。
冴华がフック気味のパンチを打ってきたのを见て、チャンスだと思ったのだ。フックの轨道ならば、その下をぬうように打ち返せば相手には见えないはずであり、実际冴华に见切られず突くことができた。
(万が一にでも视力の秘法で见切られたら最悪だから、见られないような打ち方をしなければと思っていたが、どうやらうまくいったな)
分の悪い赌けでもあった。あの钩突きをかわせなければそれで负けていただろう。纸一重であったが、どうにか巻き返すための一手を打てた。
蓄积されたダメージによって脚はがくがくと痉挛してしまうが、ためらっている场合ではない。総太郎は前に出る。
「いくぞ、今度は俺の番だっ!」
「うっ!」
冴华は受けの构えを取る。自分の状态が分からず、戸惑っているようだ。
総太郎は震える脚に活を入れるようにして前に出る。
「うおおぉっ!」
柳影のステップから连続攻撃を缲り出してゆく。まだ秘法封じは効いているようで、冴华はそれらを普通にさばくことしかできない。
「くらえ、双牙闪斧!」
左のフックと右の中段蹴りを同时のタイミングで当てに行くという、苍月の型に含まれる技だ。奥义ではないが、防御のしにくさでは斤木流の技の中でも际立った技である。だが体轴を保つのが难しく、総太郎はうまく打つことができたことはあまりない。
が、このときは奇迹的なほどに腰を入れながら轴を乱さず打つことができた。
ガシィッ!
「あうぅっ!」
フックは防がれたが蹴りは直撃し、冴华の体がぐらりと揺れる。
が、ダウンを夺うまではいかない。総太郎も次の技に移行するのに时间がかかり、取り逃がしてしまう。
「くっ、はぁ、はぁ……」
冴华は息を切らせ、肩を上下させている。男女、そして体格の差による体力差は大きいのだろう、少し総太郎が攻势に出ただけで今までの内容の差が急速に缩まる。
冴华が知らない技を出すことは确かに有効だ。仓桥のアドバイスは正しい。明らかに冴华の対応力が働いていないのが分かる。
が、これでトドメをさせるかというと、それも难しい。冴华の知らない技を缲り出すにしろ、そういうものは総太郎も充分な形で习得できているわけもなく、にわか仕込みの技ではフィニッシュブローにはなりえない。
やはり、最も得意とする技で决めなければ、冴华に胜つことは不可能だと総太郎は思った。
(まだいくつか使えそうな技はあるが、あくまで补助で使うべきだ。さて、あとどれくらいチャンスがあるだろうか)
间を置かず、総太郎は踏み込む。
が、放った突きは冴华に軽々と受け止められてしまった。
「あ、使える……?」
どうやら秘法封じは解けたようだ。
(もう终わりか。さて、また秘法封じを打ち込むことができるか?)
それができるかは微妙なところだが、决めることができれば有利にやれることは确认できた。それだけでも収穫は充分だ。
秘法の复活した冴华との攻防は互角で、いったん距离を取ると冴华はため息をついて汗を腕でぬぐった。どうやら秘法が使えるようになったことで、心の落ち着きを取り戻したようだ。
そして、冷静になってしまえば、冴华は的确な分析をしてくる。
「ふうっ。なるほど、どうやらあなたが秘法を封じてきたのね。さっき、一瞬だけ脇腹に钝い痛みがあったから、あれはツボを打たれていたってことかな」
総太郎はさすがに惊く。
黙っていると、冴华は表情も変えずに続けてきた。
「黙っているのがなによりの証拠ね。古武术らしいやり方だと思うけど、そんなものを奥の手に隠し持っていたなんて、あたしも油断したわ」
「……よく、分かったな」
「そういう技法があるということは知っていたから、思い返してみたら、なにをされたのか理解できたの。しっかし、秘法を封じる技を研究してくるなんてセンパイもやるじゃん」
冴华はさすがに知识が豊富だ。総太郎がやったことは、あっさり看破されてしまった。
ツボのポイントも悟られたということは、おそらくもう打ち込むことは困难であろう。通常ならば打つのが难しい位置のツボなのだから。
(まあいい、秘法封じは充分に役立ってくれた。冴华の动きも钝っているし、あとは俺自身の力で胜つしかない)
圧倒的な不利な状况は脱することができた。あとは胜つことだ。
「でも、もう二度と変な技は食らわないから!」
冴华のほうから前に出てくる。総太郎にペースを渡したくないのが见え见えだ。
総太郎もそれを迎撃しようと自分から踏み込む。ラッシュ合戦となるが、冴华の体力を消耗させたことで、先ほどまでよりは渡り合えるようになっている。
「でりゃっ!」
「くっ……!」
総太郎はあくまで冷静に、しかし前に出ながら冴华のラッシュに対抗してゆく。
本能の部分ではこれ以上なく攻撃的になっており、体はどんどん前に出たがっている。しかし头は自分でも惊くほどクールだ。
これ以上なく理想的な心身の状态をしている。そのおかげで、ここにきて総太郎は冴华とまったく互角の攻防をすることができている。
(いけるな。秘法封じがもう使えなくとも、俺は冴华に劣らない戦いができる)
しかし、あくまで互角のレベルであり、押し切るにはまだ决め手が必要になるだろう。
それをどうするか忙しく头を动かして考えていた総太郎だが、先に冴华が动いた。
「ふっ!」
冴华は打ち合いを嫌がり、総太郎のフック轨道のパンチに合わせて袖を掴んでいた。
(组技に来る気なのか?)
と思ったが、自ら胸を総太郎の腕に押し付けつつ、のしかかるように肘打ちを打ってきた。
「うおっ!」
まさか组んでからの打撃とは思わず、とにかく腰を回して掴みを振り払って避ける総太郎だったが――
「そこっ!」
総太郎の体势が崩れたと见てか、冴华はそこからさらに追撃の突きを打ち抜いてくる。
(こいつ、调子に乗りやがって!)
明らかに総太郎にペースを渡したくないという思いから来た奇袭だ。だが、総太郎は冴华が思うほど体势を崩してはいなかった。冴华にしては突きは工夫のないシンプルなものだったため、容易に避けると、同时に冴华の腕を脇に抱えてロックする。
「あ、ま、まずっ……!」
今度は総太郎が冴华を捕まえた。そして、冴华の腹に膝蹴りを打つ。
ドスッ!
「ひぐっ! ……ん、のおっ!」
ガシッ!
「ぐふっ!」
膝蹴りを腹に叩き込まれながらも、冴华も反撃の膝蹴りを総太郎の脇腹に入れてくる。
「くそっ、こいつ、さっさと倒れろっ!」
「こっちの台词よ! いくら殴ったと思ってるの、しぶとすぎるのよ、あなたはっ!」
二人は互いのしぶとさを忌々しげになじりながら、脚を止めての打撃戦を始める。
そこからは泥仕合気味になってゆく。互いに早く相手を倒したいという意识が强く、ガードなどの受けの行动が弱くなる。
総太郎の蹴りが冴华の太ももを打ち、同时に冴华の拳が総太郎の胸板を打つ。
「がっ!」
「あうっ!」
二人同时によろめくが、どちらも倒れはしない。完全に互角の展开だが、総太郎は危机感を覚えていた。
(くそっ、あまりクリーンヒットをもらうのはまずい、今の冴华の拳は重い! せっかく接近戦やってるんだ、こうなったら乱戦に乗じて秘法封じを狙うかっ!)
冴华がふいに钩突きを放ってくる。それに合わせて抜手を出そうとする総太郎だが――寸前で思いとどまる。
(いや、ダメだ!)
もう秘法封じは当たらないと思っていいだろう。狙いに行けば手ひどいカウンターを食らうことは间违いない。
にわか仕込みの新技は得意技よりも打つときに余裕が必要だ。それが今や见出だせない以上、结局、もはや真っ向胜负をするしかないと総太郎は结论を得る。
(いいだろう、分かりやすくていい。秘法込みのあいつの力を、正面から破ってみせる)
秘法も含めて冴华の力なのだ。総太郎は今こそ、正面から打ち破るつもりでいた。
打撃戦が続き、互いにもつれたタイミングで、どちらからともなく互いの手を握り合って力比べの展开となる。
「ぐうううぅっ……!」
「あああああぁっ!」
二人とも手に力を込めて相手を押し倒そうとするが、互いの力は互角で、二人の腕は动かない。
が、次第に冴华の表情が辛そうに変化してゆき、汗もぽたぽたと頬から垂れてくる。
「かはっ!」
冴华はついに耐えかねたように総太郎に蹴りを打ち、手を离してバックステップする。
総太郎は违和感を覚えながらも、追撃に移る。
(これは、まさか……)
试合は长引いている。しかも、冴华は前回と违い、途中から全开で秘法を使ってきている。
秘法封じが入ったときから展开は互角となり、冴华が无理をしなければならない场面も増えていた。
(限界が来たのか?)
だとすれば、ここは决めるチャンスだ。秘法を込みで倒そうという覚悟を决めてはいたが、别の要因で秘法が使えなくなったとなれば、それはそれでペースを掴むことができるかもしれないのだから都合はいいに决まっている。
回复される前に诘めねばなるまい。そう思い、総太郎は前に出て圧力をかける。
「うりゃあっ!」
気合を入れ、矢継ぎ早に连打を放ってゆくが、冴华はただ逃げるだけだ。総太郎の间合いを嫌って横にステップしてゆく。
「逃がすかっ!」
この机を逃してはいけない、と総太郎は追いすがる。
さすがに冴华も兎脚法なしで逃げられはせず、総太郎は冴华を道场のコーナー付近へと追い込む。
「うっ……」
「追い诘めたぜ、冴华っ!」
さすがに冴华も余裕がなく、総太郎を油断なく见据えながら、どう切り抜けるか考えを巡らせているようだった。
総太郎はじりじりと间合いを诘めてから、ラッシュをかけにいく。
「せえぇいっ!」
気合とともに重い突きを连続で放つ。冴华はそれらをなんとかさばきつつも、追い诘められているためにフットワークで逃げることができず、あからさまにやりづらそうにしている。
「こっ、こいつ、调子に乗って!」
「悪いが、ここで决めさせてもらうぜっ!」
総太郎は必死で前に出ながら、冴华の脚をローキックで痛めつける。ローキックという技はモーションが小さくカウンターを合わせにくい上、相手の戦闘能力を削ぐのに适している。こういう追い诘めたときには特に有効な攻撃だ。
もちろん、冴华はなにをしてくるか分からない。総太郎はあくまで慎重に、腕をはじめ防御はしっかり固めつつローキックを打ってゆく。
「あうっ! くっ……!」
冴华もガードしようと脚を上げるのだが、それでもローキックを受けるたび苦闷の表情を浮かべ、苦痛に喘ぐ。
フットワークを杀しておくことは重要だ。兎脚法を持つ冴华が相手となれば尚更である。
「うぅ……」
冴华が顔をしかめ、脚を震わせているのを见て、総太郎はようやく思い切った攻めに出る。
まず、刹涡冲にいくと见せかけてから蹴りのフェイントを入れる。ローキックで打たれていた冴华は、それに反応して脚を上げてしまう。
その状态で素早く动けるはずもない。総太郎はすかさずスムーズな足运びから左の刹涡冲を放つ。
「はあぁっ!」
ガードされたとしても、冴华の体格ならば弾き飞ばせる。この位置ならば壁に叩きつけられて大きなダメージを负うはずだ。
胜负どころと见て、思い切って决め技を缲り出しにゆく総太郎。
だが、冴华はふいに体を沈み込ませる。
「うっ!?」
刹涡冲の轨道が読めているとしか思えない动きだ。総太郎の拳が打ち抜く线上から体をずらしながら沈み込み、そこからなにか技を出そうとしているのが分かる。
「せやああぁぁっ!」
「し、しまっ……!」
冴华の脚が、すさまじい势いで総太郎の侧头部へとムチのようにしなりながら放たれる!
ガシッ!
「がはぁっ!」
クリーンヒット。ハイキックが完璧に入ってしまった。
どうやら燕撃斧のように上方向に打ち抜く动きに、腰のひねりを组み合わせたハイキックであったようだ。スピード、威力ともに申し分のないものだった。
「や、やったっ!」
冴华が胜利を确信したような、喜悦に満ちた笑顔を浮かべる。それで当然であろう、そのくらい致命的な一撃であった。
「诱いだと见抜けなかったようね! 绫子さんほどに使えないけれど、あたしもわずかな时间なら视力强化ができる。ここ一番であなたの技を见切るために、温存しておいて正解だったわ」
やはり――と総太郎は思ったが、后の祭りだ。
冴华も死に体であることは间违いなかったであろう。が、それを悟られていることを计算に入れて総太郎を诱い込み、カウンターを决めたのだ。残された力を振り绞るような、秘法の使い方だった。
「あ、ぐ……」
がくがくと総太郎の脚が震える。ハイキックは総太郎の三半规管を揺さぶり、なにより前への踏み込みにカウンターで合わされたのだ、打撃の强烈さは推して知るべしである。さすがに意识が一瞬飞びかけた。
だが――
(た……倒れるわけには、いかないっ!)
これまでの稽古、そして胜负の场面がフラッシュバックする。姫乃や优那との胜负、味わった屈辱、そして凉子をはじめ、かつてのライバルたちと竞い合いながら、自分を高めてここまでたどり着いたのだ。
その积み重ねを、无にするわけにはいかないのだ。その意地が、総太郎の脚をギリギリのところで支える。
「う……おぉっ!」
総太郎は无我梦中で、突きを缲り出す。
「なっ!」
冴华は惊いたように后ずさった。
「い、今ので倒れないの? まさか、すごい手応えだったのに!」
信じられないといったような顔。
冴华の顔に、初めて恐怖の色が见えた。それが総太郎の心を奋い立たせる。
冴华は追撃をしてこなかった。しなかったのではなく、できなかったのであろう。冴华も脚が震えてほとんど动けないでいるのが分かる。
前に出るしかない。総太郎は限界を迎えつつある体を必死に前に运ぶようにして、踏み込む。
(もう、ごちゃごちゃ考えてられない。やれることはひとつだけだ……)
総太郎の体はほとんど自动的に动いているかのようにスムーズだった。右で踏み込みながら左で体を押し付けるように拳を打ち、左足が着地したと同时に左前方へとステップし、右の回し蹴り。
ガシッ!
「あっ、ぐっ!」
冴华もフットワークが死んでおり、受けるしかない。なんとか総太郎の技をガードするが、ガードの上からでも苦痛がある様子なのは明らかだ。
さらに総太郎は、小さく半歩だけ后ろに下がってからの后ろ回し蹴りを放ち――
「くうっ!」
冴华にガードさせて动きを止めたところで、ワンツーの突きで攻める。
「こ、この……こうなったら、あたしだって……!」
だが、冴华も死に物狂いの表情で応戦してくる。総太郎の突きに対してカウンターを狙い、首を小さく动かして突きをかわしながら踏み込みながらの肘打ちを当ててくる。 内容来自
ガスッ……!
「がっ……!」
胸板を打たれる。しかも、技には鋭さが戻っていた。
総太郎はさすがに惊く。先ほどまでの攻撃で、少なくとも脚は死んだはずなのだ。なのにここまで鋭く踏み込んで技を当ててくるとは。
「まだこんな动きができるとはっ……!」
「はぁ、はぁっ……ここまできて、あたしも负けるわけにはいかないもの……ここまでさせられるとは、思っていなかったけれど……」
震えていた脚が、しっかりと畳を踏みしめている。
「あたしは、昔から伝えられていた秘法とは别に、オリジナルの秘法を组み上げるための暗示法も少しは使える。前回の胜负でも、最后にそれを使わせてもらったけどね」
忘れもしない。総太郎の起死回生の反撃を溃した、あの无茶なスウェーバックの动きのことだろう。
「あれとはまた违うけれど、今は疲労やダメージを麻痺させる秘法を即席で组んだ。これで、さっきあなたを圧倒したときの动きを、あたしはまだ行使することができる」
后にどんな后遗症が出ることか。総太郎にも、その恐ろしさは察することができる。
だが、后のことなど考虑してはいられないほど、冴华も胜利への执念を燃やしているということだ。
「暗示の组み上げや组み换えは神仓流初代が使用を禁じた、いわゆる禁术だけどね……これがあたしの本当の奥の手。今度こそっ、あんたに胜ち目はないっ!」
「そんなものを持ち出していたのか。だが、そんなことを闻かされたところで、今さら俺が怯むとでも思ったか」
普通に考えれば、先ほど総太郎を圧倒したときの动きを冴华ができるというのなら、消耗した今の総太郎には胜ち目がないはずである。
だが、不思议と総太郎は负ける気がしなかった。
「せいっ!」
総太郎は构わず前に出て、気合とともに突きを放つ。だが冴华も本人の言の通り、万全の动きで総太郎の攻撃をさばこうとしてくる。
「ふっ!」
そして、その合间をぬって刚力法の乗った重い突きを返してくるのだ。
ガシッ!
「ぐっ……!」
肩口に反撃の突きを受けて、総太郎は顔をしかめる。
が、もはや构っていられない。総太郎は小さなモーションの斜打を打ちつつ、同时に冴华が连続で打ってきた突きを左腕でガード。
その次の瞬间には、右にステップしていた。その动きの无駄のなさに、冴华は目を见张る。
さらに、そこからの総太郎の蹴りと冴华の突きが交错した直后、総太郎はもう次の技のモーションに入っていた。
「な、なんてスムーズな动き……こいつ、ここにきて动きが、违ってきてる……?」
冴华は総太郎のフットワークについてこられない。
今の総太郎は満身创痍なせいであるのか、最小の力の入れ方で最大の动きをしようと、体が自然と対応しているのかもしれない。ステップは恐ろしいほどに自然で、いつ脚を踏み出したのかが冴华にも见えていない様子であった。
「な、なに、この动きはっ! み、见えない!」
视力を强化しているかどうかは分からない。が、たとえその秘法を使っていたとしても、総太郎の动きを见切ることはできなかったであろう。见てから反応していては必ず遅れを取る、そういう动きを総太郎はしている。
(この感覚――これが、柳影の极みなのかもしれない)
流れる水と化したかのように、総太郎は本能に従ってステップと打撃を缲り出してゆく。今まで体に染み込ませてきた型の动きが、理想的な形となって现れている。総太郎の胜利への执念が、そうした动きを引き出しているのだろう。
加えて――
「せいっ!」
冴华も総太郎の动きが一瞬止まったところに突きを合わせてくるが、総太郎はそれが缲り出される気配を察知して、それを受け流せる方向へと先にステップしている。结果、冴华の突きを左手で軽々と受け流しつつ、同时に、総太郎の突きが缲り出される。
「うっ!」
冴华はそれをなんとかガードするが、ガードしていては当然反撃には移れない。
(この、动きなら……できるのか、先の先、その戦い方が)
自分の动きが鋭くなるのに合わせ、神経も研ぎ澄まされているのが分かる。
あの致命打になりかねなかった蹴りを受けて、开き直ったせいなのか。総太郎は、冴华の动きを察知しつつ、先に攻撃的な动きを合わせるように动いている。
柳影の极み、そして先の先。それは両轮と言ってよいもので、どちらが欠けても今の総太郎の动きは成立し得ない。
达人との手合わせや、数々の胜负で磨いてきた総太郎の、それは成果だった。
「なっ、なんでこんなっ、う、受け流される……!」
冴华の攻撃はクリーンヒットせず、総太郎は彼女に技を当てることができている。
だが、どこかでトドメをさしにいかねばならない。総太郎もすでに限界を超えているのだ。
冴华もここにきて総太郎の覚悟を察してか、见事に技を合わせてきた。
それは奇しくも、鸟居での胜负で美耶が放ってきた、神仓流が受け継いできた突きだった。秘法の力を乗せて、まっすぐに放たれてくる。
「うりゃあああぁぁっ!」
「でやああああぁぁぁっ!」
そして、総太郎の右拳は、冴华の左腕に受け流される。
「ぐっ……!」
受け流したとはいえ、冴华の腕には相当の冲撃があったはずだ。だが、とにかくも受け流した。
総太郎の必杀の一撃をどうにかして逸らしつつ、同时にカウンターの突きを入れるために、こんな无茶な防御行动を取ったのだった。
「胜ったっ!」
冴华の右拳はあやまたず総太郎の腹へと鋭く飞んでいる。兎脚法の势いを土台にした突きだ。それが美耶の使っていた神仓流本来の技であることを、総太郎は见て察する。最后は神仓流の技で斤木流を打ち破りたいという思いが出たのだろう。
今までの冴华のものよりも鋭く速い突き。刹涡冲を受け流された直后の総太郎には、避ける余裕はない――
「……っ、おおおおぉぉぉっ!」
雄叫びを上げる。
この状况を打ち破る方法が総太郎の头に闪く。その瞬间、総太郎の体轴は左右逆に反転していた。
そして、左の掌底が冴华に向かって缲り出され――二人の腕が交错した!
ドスッ!
「が……がはっ……!」
冴华の拳が、総太郎の腹に深く突き刺さった。
梁瀬美耶が使ったものと同じ、鋭い二段突き。兎脚法の踏み込みから缲り出されたそれは、総太郎の左の突きよりも一瞬速く相手の体へと届いたのだ。
「おぐっ、うっ……」
必杀の一撃を缲り出していた総太郎は、前へと鋭く踏み込んでいた。そこにカウンターの形で冴华の技がクリーンヒットしたのだ。
総太郎の体はがくりと前へ崩れ落ちる。立っているだけでギリギリの状态だ。冴华はそして、すかさず追い打ちをしてきた。
「はああぁっ!」
冴华の膝が総太郎のボディに突き刺さる!
ドスッッ!
「がはあああぁっ!」
突きを受けたばかりのところに再び强烈な一撃。それは、総太郎がかろうじて踏ん张っていた両足から力を夺うには充分すぎるものだった。
そして、畳の上へと膝から崩れ落ちた。
「あ……ぐ……」
视界がちらつく。総太郎は、下半身のみならず全身から力が抜けてゆくのを感じていた。
互いに全身全霊を込めた一撃を缲り出していたのは明白。それが自分にだけ当たってしまった时点で、総太郎の意识の中の理性的な部分はほぼ负けを悟っていた。ただでさえ、そこまでに受けたダメージも大きく、ギリギリで戦えていたような状态だったのだ。 内容来自
「そ、そんなっ……なぜ……」
见上げると、视界には片腕を支えるようにしながらやっとの状态で立っている冴华の姿があった。彼女も満身创痍だったことが分かる。
「はぁ、はぁ……どうやったのか知らないけど、体轴が反転してたように见えたわ。けど、そこから突きが缲り出されるのが一瞬遅かった……急な方向転换に、腕がついてこなかったのかもね」
息を乱しながらも、冷静な冴华の声。彼女は総太郎のそばまでゆっくり歩いてくると、少し膝を折りたそうな仕草をしたが、それでもしっかりと両足で立って総太郎を见下ろしてきた。
「まったく、最后まで手间をかけさせてくれたけど……最终的には、あたしの技が胜ったわね」
安堵感からか、冴华の顔には笑みが浮かんでいる。
「この土坛场であんな动きができるようになったことは褒めてあげるけど、ぶっつけ本番で新しい技を缲り出したところで、そんなのがあたしが今まで磨いてきた技を上回るわけがないじゃない」
そして、冴华は総太郎に向かって人差し指を突きつけてきた。
「これであたしの胜ち! 认めてもらうわよ、斤木総太郎!」
「うっ……」
ここで负けるわけにはいかない。胜负の前に取り交わした条件で、総太郎が负けたら斤木流は解散することになる。
ここで负けるということは、総太郎が流派の长として终わってしまうことを意味する。いや、斤木流そのものが神仓流に対して完全に屈服するということになるのだ。
それを思うと総太郎は屈するわけにはいかない。だが……
「くっ、ま、まだ俺は……」
両手を畳についた状态だ。このまま両手を支えにして立ち上がろうと総太郎は试みる。
だが、両足が震えて腕にも力が入らず、立ち上がることがどうしてもできない。
「ま、负けるわけには……いかないっ……」
认めたくない一心で立ち上がろうとする。その気持ちに、しかし体はついてこなかった。
がくがくと震える両足をなんとか立たせようとして失败して崩れ落ちる、それを缲り返していると、冴华が鼻で笑ってきた。
「ふっ、无様な姿ね」
そして、何度目か、畳の上に膝をついて四つん这いの状态になると、総太郎は憔悴しきってしまっていた。
「がはっ、はぁ、はぁっ……」
もはや、立ち上がる力は残っていないのだ。そのことを悟ると、悔しさが胸に満ちてくる。
「う、うう……だ、ダメなのかっ……」
がっくりとうなだれる。必胜を期した浑身の一撃が届かなかった时点で、総太郎の戦う力はすでに失われていたのだ。
そんな総太郎を见下ろして、冴华はようやく笑みを漏らした。
「ふふっ……やったわ。ここまできて打ち破られたなら、さすがにもう负けを认めざるを得ないようね」
そして、冴华はふいに総太郎の体を乱暴に蹴飞ばした。
「ぐはっ!」
蹴飞ばされて大の字に横たわった総太郎。その胸板を冴华が乱暴に踏みつけた。
「ぐっ」
「あたしを倒すために顽张って顽张って、必死にここまでたどり着いたっていうのに、结果はやっぱり返り讨ち。あたしを倒すために重ねてきた努力が全部无駄に终わっちゃって、さぞ悔しい思いをしてるでしょうね。ふふっ」
今回は间违いなく、今までの冴华との胜负の中で最も胜利に迫っていた。だが、それでも彼女には届かなかった。
多くの人の助けを得て、総太郎は强くなった。しかし、それを上回る実力を冴华は见せつけ、こうして総太郎を踏みつけて见下ろしてきている。
始めから、格闘家としての才に差がありすぎたのではないのか。格の违いを见せつけられたような絶望感を味わわされて、総太郎はうめく。
「ううっ……く、くそっ……」
やるべきことをやって、最高の舞台を整えた上で挑んだ决戦。それだけに、この败北は今まででも特别に悔しいものだった。
男としての悔しさならば、今までも同等のものを味わっていた。だが、今日のものは格闘家として、自分の限界を思い知らされたようなものだ。絶望感は今までで最大のものがあった。 copyright
「さあ、はっきりと自分の口で负けを认めなさい。あたしを见上げながら、悔しさを噛みしめるようにしてね。ほら、まさか认められないってことはないでしょう?」
そう迫ってくる冴华。総太郎は、冴华の均整の取れたスレンダーな体を见上げながら、その言叶を口にする。
「お……俺の、负けだ……」
その瞬间、総太郎の目尻に涙が渗む。
この屈辱感は终生忘れることはないように思えた。冴华の体重を胸板に感じながら、総太郎は冴华が言ったように悔しさを噛みしめる。
それを见下ろして、冴华はニヤニヤと笑った。
「そう、その顔。あたしはあんたが心から絶望した、そういう顔を见たくて格闘技を続けていたようなものなのよ。ふふ……満足だわ」
冴华はぐりぐりと総太郎の胸板を踏みにじる。そうされるたびに、総太郎のプライドがすり溃されてゆくかのようだった。
「あ、あううっ……」
「だからもっと早くあきらめればよかったのよ。どうせあたしには胜てないんだから」
そう言って小さく舌を出す冴华。なまじ可怜な容姿をしているだけに、胜ち夸られてしまうと屈辱感も大きい。
だが、胜ち夸らせておくことしか今の総太郎にはできなかった。
やがて、冴华は踏みにじることに満足したのか、ふっと息をついて一歩体を引く。
「さあて、あなたを屈服させたら絶対にやっておきたいと思っていたことがあるのよね。斤木流の当主としての完全な败北を味わわせてあげるわ」
そう言って冴华は道场の脱衣所に引っ込むと、何かを抱えてすぐに戻ってきた。
それは総太郎にも见覚えがあるものだった。古い一枚板のそれは――斤木流道场の看板だった。
「どうして、それを」
端正な顔にニヤニヤと笑みを浮かべている冴华。総太郎に返すつもりで持ってきたのではないことは明白だ。
そして、総太郎は冴华が何をするつもりなのか悟った。総太郎の心を折るために、そして自分が気持ちよくなるために、この场で斤木流の负けをこれ以上ない形でつきつけようというのだ。
冴华がなぜ今の今まで斤木流の看板を保管しておいたのか。考えてみれば、いつ処分しようが彼女の胜手であったろう。
それは、このときのためであったのだ。
「ま、待っ」
冴华の鋭い蹴りが一闪し、看板は空中で乾いた音を立てて真っ二つに割けた。
そして、床に落ちた板をさらに足刀で踏みつけて粉砕する。冴华の足元でバラバラに砕けた斤木流道场の看板を见て、総太郎は呆然とする。真の意味で斤木流が神仓流に、そして総太郎が冴华に屈した瞬间であった。
「これで斤木流はこの世から消灭したわ。少なくとも、あなたを当主とした斤木流はね。今の光景を目の当たりにすれば斤木総吉もさぞ悔しがるでしょうね、最高の気分だわ」
愉悦に満ちた笑みをたたえ、うっとりと状况に酔っているような様子の冴华。ここまで胜ち夸られ、踏みにじられても、负けた総太郎には何もできない。
格闘家としての夸りを蹂躙されるがままでいるしかないのだ。やがて、悔しさよりも絶望感が上回り、自分の中から急速に闘争心と気力が消えてゆくのを感じる。
(俺はついに、こいつには及ばないのか……あれだけやって駄目なら、もう、何をしても胜てない……)
一度として冴华に胜つことができなかった自分の不甲斐なさに、格闘家としての自分はここが限界なのだろうと思わされる。今日は自分の実力以上の动きを缲り出せた感覚もある。その上で负けたのだから、どうしようもなかった。 本文来自
「もう逆らう気力もなくなったみたいね。とはいえ、あなたは何度叩いてもしつこく立ち上がってくる男だし……斤木流の解散を约束させたと言っても、流派と関係なくあたしへのリベンジを志して挑んでくるかもしれない」
冴华は、総太郎は再起する可能性がまだあると感じているようだ。
「この机会に、もうどうあっても逆らえない立场にしてやるしかないわね」
「……これ以上、俺をどうする気なんだ……?」
「まあ、まずはひとつ、こっちの方でも格の差を思い知らせてあげる。あなたはまた、自分を负かした女に犯されてよがり狂うことになるのよ」
そして、冴华は着ているタンクトップに両手をかけて脱いでしまうと、スポーツブラとスパッツだけの姿になった。
「天国を味わわせてあげるわ。いえ、あなたにとってはあたしから与えられる快楽なんて地狱なのかな?」
スポーツブラとスパッツも脱いでしまい、全裸になった冴华は、倒れたままの総太郎にのしかかってきた。
冴华の引き缔まった、それでいて柔らかそうな肢体は相変わらず男の性欲をそそらせる。嫌いな相手であっても、绮丽な体であることは间违いなく、総太郎はどうしても冴华の裸を目にすると心臓の鼓动が速くなるのを止められなかった。
「さてと、じゃあ服をはだけさせて……」
冴华は総太郎の道着の前をはだけさせると、中の肌着を首元までずり上げて、総太郎の胸板まで露出させる。
そして下半身も、ズボンとトランクスを脱がせてペニスを露出させた。冴华に脱がされて、総太郎は羞耻を刺激される。负けた直后とあってはなおさらだ。
「くっ……」
「相変わらず、しっかり锻えられたいい体をしてるわね。こういう男を犯すのは、女としてたまらない优越感があるから好きなのよねー。屈服させた今だから言えることだけど」
笑みを浮かべる冴华。近くで顔を见ると、意志の强そうな瞳に射抜かれるような感覚に陥る。相変わらず整っていて绮丽な顔立ちだ。
だが、彼女がそんな可怜な少女だからこそ负けたことが悔しくもなる。体を见ても男と比べれば明らかに华奢であり、男よりも絶対に身体能力では劣るはずなのだ。それなのに、この少女に総太郎はついに胜てなかった。
「じゃ、勃起しなよ」
そう言って、冴华は総太郎のペニスの裏筋を指先でつうっとひと抚でした。
「ううっ!」
すると、総太郎自信が惊いてしまうほどに、ペニスはあっさりと膨らんでゆく。
「ふふん、相変わらずここは弱いね。格闘では手こずらされたけど、セックスは今日も圧倒できそうかな」
冴华はそう言うが、総太郎はセックスの面でも前回よりはよほど锻えられてきたはずなのだ。事実、美耶なども圧倒した上でここに来ている。
が、冴华に屈してしまったばかりということが响いているのだろう。総太郎自身、今までにも身に覚えがあることだった。女性に负けてすぐ性的なことをされると、気后れしているせいもあって性欲を刺激されることに抵抗できない。
「あなたはこれから、斤木流を灭ぼした憎い女に欲情して、精液をいっぱいぶちまけちゃうことになるのよ。気持ちよさと悔しさがいっぺんに袭ってくる感覚、今回もたっぷり味わうといいわ」
「くっ……」
「でも、前回とは少し趣向を変えるけどね」
そして、冴华はゆっくりと顔を近づけてくると、そのまま総太郎の唇を夺った。
ちゅうっ……
「むぐっ……!」
唇を重ねられた瞬间、総太郎の心臓が激しく脉打った。
心地のいい柔らかな唇の感触。嫌いな女相手のキスなど、普通に考えればいい気分になるはずもないのだが、冴华の唇は恐ろしく男の情欲に诉えかけてくる感触をしていた。
「う、うう……」
「ふふっ……」
そのまま、冴华は右手で、総太郎のペニスをそっと握り込むと、上下に刺激してくる。
しゅっ、しゅっ……
「ぐっ、むぐっ、うっ……!」
强くもなく弱くもなく、絶妙な强さの手コキ。それを、キスの感触と同时に味わわされる。
とても冴华の责めとは思えない、心地よさで男の感覚を痺れさせるような性行为だった。総太郎の鼓动はどんどん加速してゆき、唇に伝わる冴华の暖かな唇の感触も相まって、体の感覚が快楽に堕ちてゆくのが分かる。 本文来自
(う、ううっ、そんな……こんな、心地いいイかされかたをしちまうのか……)
苦痛を伴う射精を强いられるよりも、それはある意味では抵抗があった。冴华の责めで心地よくなどなりたくはない、そう思っていたが、彼女の责めに耐えることはできず、どんどん射精感を高められていってしまう。
ちゅっ、ちゅうっ……
「んぐっ、うっ、んううっ」
キスの感触が総太郎の意识を惑わせ、性的な快楽を加速させてゆく。
そして、そのまま手コキをされ続け、ついに……
しゅっ、くにっ、くにゅっ……
「むぐっ、うぐううぅっ!」
びゅくっ、びゅくっ……! びゅるっ、びゅっ、びゅううっ……
「ぐっ、うっ……」
射精の快感に総太郎の体はがくがくと震える。射精感が顶点に达しそうなタイミングでちょうど亀头を揉むように刺激され、见事に絶顶させられた。総太郎の体の快感を完全に把握しているかのようなタイミングだった。
心地のいい絶顶に、総太郎は屈辱と快楽が相半ばする感覚の中で身闷えしていた。いまだ、意识には抵抗の気持ちが残っており、冴华から与えられる快感を心地よく感じたくないと思っている。
だが、そんな抵抗も――
「ん、んっ……」
にゅるっ……
「う、うぐっ……」
射精の余韵によって体が快楽でしびれるようになっている総太郎。そこに、冴华はついに舌を総太郎の口内に滑り込ませてきた。
柔らかく吸い付くような冴华の舌が総太郎の舌に络みつき、激しく刺激してくる。
じゅぷっ、れろっ、にゅるっ……ちゅっ、ちゅぷっ、じゅるっ……
(あ、あぁ……な、なんだ、こいつのキス……舌から体に痺れが伝わっていくみたいで、体の力がどんどん抜けていく……)
抵抗の気持ちが失われてゆくようだ。もともと胜负に败れた时点で気力のほとんどが失われていたが、残っていたかすかな闘志も消えていってしまう。
前回の、无理やり犯して精液をすべて搾り取るような、苦痛をともなく性行为とはまったく违っていた。
(そもそも、こいつとキスすることになるなんて……)
今まで冴华からは何度も性的な责めを受けたが、キスだけはされたことがなかったのだ。それは彼女が総太郎を嫌っていることの証であろうと思われたが、しかし、胜负のついた今ならばやってもいいということなのだろうか。 copyright
そして、ディープキスをしながらリズムよく冴华が手を动かしてくる中、総太郎の射精感は再びあっさりと限界を迎えてしまう。
「ぐっ、むぐううぅっ!」
びゅくっ、びゅるるっ……!
「ぐっ、うっ……」
二度、三度と精液を喷射するたび、総太郎の体も揺れる。冴华と舌を络ませ、唇の柔らかさを味わわされながらの射精は、信じられないほどの心地よさがあった。
(あ、ああっ……心地よすぎる……けど、こんなっ……)
ディープキスで増幅された性感の中での射精、その余韵が体中に伝わってゆくのを感じて震える総太郎。
が、そのタイミングで冴华が突然、総太郎の舌を激しく攻め立ててきた。
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅるっ、ちゅううぅっ!
「んぐっ、ううっ!」
びゅっ、びゅくっ! どびゅうっ、びゅっ、びゅるっ……
「ぐっ、あっ、ああああぁぁ……」
総太郎は舌と唇の粘膜を责められて、あっさりと连続射精に追い込まれた。射精の余韵に浸っていた中の连続射精はあまりの快感で、総太郎は両目がひっくり返ったようになり、だらしなく缓んだ表情になってしまっている。
そんな総太郎の顔を见下ろして、冴华はゆっくりと舌を引き抜き、唇を离す。
「ふふっ……あんたをぶっ倒した手で败北汁いっぱい出させるの、すっごい楽しい? 情けないイキ顔を见るのもいい気分だし、やっぱあんたとエッチなことするの结构好きだわ」
冴华の端正な顔にかすかな兴奋の色があり、それがまた総太郎の心臓の鼓动を加速させる。先程まで杀気をぶつけ合っていたことすら忘れてしまいそうなほど、総太郎はなぜか冴华の姿に魅力を感じてしまっていた。
「キス程度でこんなにとろけちゃうなんて、案外だらしないわね。まあ、负けたせいで弱気になっているからこそなんだろうけど。あたしが植えつけた女性恐怖症も、すっかりぶり返したみたいね」
冴华に负ければぶり返す。それは前回もそうだった。
そして、今回は凉子に癒してもらっても回复することはないのではないか。なぜか确信的に、総太郎はそう感じた。
「手コキだけで精液绞り尽くしちゃうのももったいないし、このくらいにしといてあげる」
「はぁ、はぁ……」
冴华はなおも右手でペニスをさするようにして弄んでくるが、射精はさせないように弱い刺激だけにとどめているようだ。が、その柔らかな手の刺激で、総太郎はじわりとした快感を覚え、身动きが取れなくなる。
小さく刺激を与え続けることによって、総太郎が万が一にも反抗することを封じているのだ。この性の技术ひとつを见るだけでも、性行为では格闘技以上に胜ち目がないことが分かる。
「じゃ、挿れるよ」
ペニスの上にまたがり、腰を落とそうとしてくる冴华。どうやら、もうセックスを始めるようだった。
上から迫ってくる、冴华の均整の取れた裸体。抱きしめればさぞ心地良い感触が味わえるのだろうと思う。そして、ペニスを饮み込もうとしている膣も、极上のものであることを総太郎はすでに思い知らされている。
快楽の予感に胸は高鸣るが、冴华にこれ以上快楽を味わわされてしまっていいのかという抵抗感が総太郎にはまだ残っていて、素直に冴华との行为を受け入れられるはずがなく、その思いが顔にも出ていただろう。冴华は総太郎の顔を见て、ふっと笑った。
「あのキスも充分心地よかったはずだけど、まだあなたは堕ちてはいないみたいね。ま、これまでのことを考えれば当然かもだけど……少しぐらい抵抗の気持ちが残っていたところで、あたしとのセックスの前では全部无駄よ。あなたは今から、本当の意味で堕ちることになる」
そして、冴华はひとつ舌なめずりをすると、ゆっくりと腰を落としてきた――
ずっ……ずちゅうううぅっ……
「くっ……あ、あああぁぁ……!」
温かで、刺激の强い膣肉。それがペニスを饮み込んでゆき、膣壁とペニスとが擦れ合う感触が走る。
柔らかなヒダによって强めに抚でられる感触は、総太郎の今の忍耐力で耐えられるようなものではなく、あっさりと絶顶させられてしまう……!
びゅくっ、びゅっ……どぷっ、びゅくっ……! 内容来自
「うあっ、あっ、ああぁっ!」
「あはっ、まだ全部入ってないのに射精しちゃってるんだ。さすが、早漏だけはどう顽张っても治らなかったみたいね」
それだけは、性行为で锻えても完全には治癒しなかった、おそらくもともとの総太郎の体质なのだった。今までどれだけ、それが女性との胜负で灾いしたことか。
冴华はかさにかかって早漏を嘲笑してくるかと思われたが、意外にもそういう雰囲気ではなかった。
「でも気にすることないわ。早くても数がこなせるなら问题ないんだし、その点ではあなたはとても优秀だし」
「え……」
「あたしも膣内に射精される感覚は嫌いじゃないしね。今日は、あたしもたっぷり気持ちよくさせてもらうわよ」
そして、ペニスは冴华の膣の一番奥まで挿入された。
ずちゅうううぅっ……
「は、はうぅっ……」
びゅくっ、びゅるっ……
一番奥にペニスが到达するまでに、さらにもう一度射精。総太郎は甘い快楽に体を小さく震わせる。
これで、冴华の恐るべき膣にペニスが完全に囚われてしまった。どう扱おうとも冴华次第、彼女がその気なら総太郎を壊すまで解放することもないだろう。
「くうっ、うっ……」
冴华の膣内はほどよい缔めつけで、総太郎のペニスには常に温かな圧迫感がかかっている。
「気持ちよさそうだねー。ま、神仓流の房中术では自由自在に膣圧を操るのは基本みたいなもんだし、今までの経験であんたが気持ちよく感じる膣圧も把握してるから、今はすっごく心地いいはずだよね」
事実、ペニスに伝わる膣肉の感触の具合のよさに体を震わせるばかりで、言叶を発することすらできない。このまま冴华が一切动かずにいるだけでも、そのうち射精してしまうことだろう。
(き、気持ちよすぎるっ……こいつの膣、どうなってるんだ……本当に、俺にちょうどいい缔めつけの强さを完璧に把握しているんだ)
それが把握できていたとして、その强さを完璧に保てる冴华の技量の寻常なものではない。
「斤木流にも性技ぐらいあるでしょうけど、それを身につけることができていたとしても、この状况じゃどうしようもないわよね」
「ううっ……」
「さて、手始めにひとつイかせてあげる。えいっ」
可爱らしく両脇を缔めて胸を强调するポーズをしながら、冴华は膣を一瞬、强く缔めつけた。
ぐにゅううぅっ……!
「あ、ああああぁぁぁっ!」
どびゅうううぅっ! どぷっ、びゅくっ、びゅるっ……!
「ひぐっ、あっ、あぐううぅっ」
背筋を反り返らせ、激しく絶顶する総太郎。络みついた膣肉がペニスを强烈に缔め上げて、精液を激しく喷出させる。
美しい丸みを帯びた冴华のおっぱいや、彼女の端正な顔を见上げながらの一方的な射精は、総太郎に强い屈辱感と败北感をもたらした。
(だ、だめだ、かなわない……俺はこのまま壊されるしかないのか……)
快楽とともに、恐怖が総太郎の心を侵食してゆく。それを察したのか、冴华は苦笑しながら体を前倾させ、総太郎に顔を近づけてきた。
「怖がっちゃってるみたいね。ま、今のはほんの挨拶っていうか、あたしの膣の具合のよさを味わってもらいたかっただけだから安心しなよ。ここからは本当に优しくしかしないからさ」
そして、冴华はそのまま総太郎に体を重ねるようにして密着してくる。柔らかな胸が総太郎の胸板に当たり、男の本能を刺激してくる。
「こうやって抱き合いながらセックスしたら、とっても気持ちいいと思うんだよね。あたしもこういうのは初めてだから楽しみかも」 内容来自
冴华はそう言いながら総太郎の首の后に両手を回し、しっかりと抱きついてきた。もう少し近づければ再びキスしてしまえるほど、顔も至近距离だ。
そのまま、冴华は腰を动かし始める。
ずっ、ずちゅっ、ずぷっ、ずっ……
「くうっ! あ、ああっ!」
「ふふふ、あんたのおちんちんの热が伝わってきて、悪くない気分だよ。男とのセックスを楽しむってのは初めての経験だけど、これは気持ちよくなれそう」
冴华は、完全に支配した男相手でなければセックスを心から楽しむことができないのではないか。快楽に染められた意识の中で、総太郎はおぼろげにそんなことを思った。
そして、男とのセックスを楽しみながら、総太郎の心を屈服させようとしてもいる。なぜこの行为でそれができると思っているのかは分からなかったが。
(前回みたいに、俺の心を折るセックスをすればいいだけなんじゃないのか。どうして冴华は、今さらこんな优しいセックスをしようとしているんだ……)
分からなかったが、考えても无駄なことではある。総太郎は冴华の行为に流されるしかないのだ。
冴华は小刻みに腰を上下に动かしていただけだったが、次第に様々な方向に动かし始め、グラインドもしてくるようになる。
ぐちゅっ、ずっ、ずぷっ……くちゅうっ、ずちゅっ……!
「うあっ、そ、そんな动きをされたら……あ、ああっ!」
どぷっ、びゅっ、びゅるっ……
「ふ、ああぁっ……」
グラインドで味わわされたペニス全体への刺激に耐えられず、総太郎は絶顶する。冴华に抱きしめられ、その体温と柔らかみを味わわされながらの射精は、素直に男としての幸福感を覚えるものだった。
(こ、こいつとのセックスで、こんな気持ちよくなっていていいのか……)
せめて不快に感じ続けるべきではないのか。だが、冴华の感触や匂いにさらされ続け、そして间近に见る整った顔立ちを见つめていると、だんだんと可爱らしく感じられてきてしまう。
「また絶顶してくれたみたいね。まあ、あたしにかかれば当然のことだけど」
目から敌意が感じられなくなっている。こんな视线を彼女が向けてくるなど、思ってもみなかったことだ。
「ほら、そろそろまたイっちゃうんじゃない? 远虑せずに、あたしの中でいっぱい気持ちよくなるといいわ」
「くっ、あっ、ああっ!」
「どうせなら、乳首もいじってあげようかな。えいっ」
冴华は両手の指で、総太郎の乳首を强くつまんで小さくひねる。その絶妙の力加减で、総太郎は乳首から全身に弱い电気が走ったかのような感覚を味わわされる。
「うっ、こ、これは……」
「で、乳首つまみながら、思いっきりイかせてあげる。膣を缔めて、と」
ぐちゅううぅっ!
「うあっ、あっ、ああああっ!」
びゅっ、びゅくっ! どぷっ、びゅっ……
びくっ、びくんっ……
「ひぐううぅっ……!」
「あはっ、すっごい気持ちよさそう。男もやっぱり、乳首をいじられたら気持ちいいわよね。どう? 全身が快楽で痺れちゃうみたいでしょ」
「は、はうぅっ……はぁ、はぁっ……」
「ふふっ、満足してくれたみたいね。あたしもなかなか気持ち良かったわ。総太郎は相変わらず、おちんちんは优秀ね」
ひとしきり総太郎の精液を搾り取ってみせてから、冴华は喘ぐ総太郎を満足げな笑みを浮かべながら见下ろした。
「格闘でもこっちの方でも、あたしを満足させてくれる男はあなただけかもしれない。これなら本当に、あなたをあたしの元に迎えてもいいかもね」
そう言って、ついで彼女は甘い声をかけてきた。
「総太郎。あなたは今日ここで、あたしと婚约しなさい。あたしの婿になって、神仓家の一员になるのよ」
「え……」
思いもかけないことを言われ、総太郎は混乱する。
「それが一番自然なこと。もともと神仓と斤木の家はひとつだった。あたしたちが结婚することで元に戻すべきなのよ」 内容来自
结婚。冴华がそんなことを持ちかけてくるとは、総太郎はまったく想像したこともなかった。
「ど、どうして……お前は、俺のことを憎んでいるはずだろう」
「憎んでいたわよ。でも、どっちかというと憎いのはあなたの父亲のほうだったし」
いったん言叶を切って、冴华は柔らかな视线を向けてくる。
「あなたのことは、屈服させて叩き溃してやる、としか最初は思っていなかったけど……あなたは努力によって格闘家としての実力をどんどん上げてきたし、今では斤木流の奥义を身につけていて自らの流派を知悉してもいる。神仓と斤木がひとつになるにあたって、あたしの婿としてあなた以上に相応しい人间はいないと今は感じているわ」
评価してくれている。おそらく、総太郎が完全に败北した今だからこそ、冴华も口にする気になったことなのだろう。そうでなかったら一生言わなかったであろう言叶が冴华の口から次々に纺がれてくる。
「あなたがあたしの元に来ることで、神仓流は完璧な流派となり、初代の顷の力を取り戻すことになるでしょう。それを、あなたも见たくはない?」
兴味がない、といえば嘘になるだろう。
だが、结局は神仓に斤木が吸収されることになるのであり、本来それは受け入れがたいことだ。
それでも、総太郎はそもそも嫌とは言えない。负けた自分には抵抗することはできない、そんなあきらめの気持ちがある。
「见たくないと言っても、どうせお前はそうするんだろう……」
「そうだけど、できれば纳得して受け入れて欲しいんだよね。まあ、これから最后の仕上げをするから、それが済めば自分から结婚してくれって言ってくるようになるだろうけど」
この上、どんな责めを味わわせようというのか。今日の冴华の责めは心地よいものばかりで、総太郎の心のどこかにはこれからの行为への期待があった。このままなすがままになっていたらどうなってしまうのか、前回の苦痛をともなう责め苦とは违った恐怖がある。
「あたしの奴隷夫になって、一生を神仓流のために尽くしなさい。それがあなたの、败者としての运命よ」
「うっ……」
やはり冴华はただ総太郎を好きになって结婚を持ちかけてきたわけではないのだ。しかし、ろくでもない运命が待っていそうなことは分かるが、冴华の美しい瞳に见据えられて、総太郎は心臓の鼓动が高鸣るのを止められない。
そして、冴华は顔を近づけ、そのままキスをしてきた。
ちゅうぅっ……
「むぐっ、うっ……」
びゅくっ、びゅっ……
キスの瞬间、その唇の感触の柔らかさだけで総太郎は兴奋が一瞬で高まり、射精してしまった。先ほどのキス手コキと、その后のセックスの心地よさによって総太郎はすっかり冴华の责めに弱くなってしまっていて、ことにキスにはまったく耐えられない状态にされていた。
(うう……こいつのキス、なんでこんなに心地いいんだ……)
冴华の体の感触、そして甘い匂い。それを味わわされながらのキスは信じられないほどの心地よさがあった。冴华が相手でなければ素直に贪る気になっていたであろう快楽だ。
そして、唇を重ねながら、冴华は小刻みに腰を动かし始める。
ずっ、くちゅっ、ぬちゅっ……
「むっ、うっ、んううっ」
ペニスに伝わる柔らかな膣肉の刺激。唇と性器と、そして抱きしめられていることで体の感触とも相まって、まさに全身で冴华の体を味わわされているのだ。
もはや冴华への今までの感情は雾散し始め、もっと彼女との性行为を楽しみたいと感じてきている。このまま快楽を味わわされ続ければ、必ずそうなってしまうだろう。
分かっていても、総太郎はそれを止めることができなかった。
「んぐっ、うっ……」
ちゅっ、ちゅうっ……ちゅぷっ、れろっ、じゅぷっ……
唇をねぶって、その柔らかさを味わわせながら、ゆっくりと舌を络めて粘膜の感覚を伝えてくる。
络み合う粘膜が痺れたような感覚になり、その微妙な性感が総太郎の全身に染み渡ってゆく。そして、全身の性感帯がジンジンと痺れてきたタイミングで、すべてを把握しているかのように冴华はペニスを刺激してくるのである。
ぐちゅっ、ずっ、ずぷっ……ずっ、ずちゅっ……
「う、ううっ……んっ、むうっ、ぐっ……」
そして、総太郎の射精感が高まってきたところで、冴华はペニスを膣の一番奥まで饮み込みながらゆっくりと绞めつけてくるのだった。
くちゅううぅぅっ……!
「んううううぅぅっ!」
どびゅるるるっ! びゅくっ、びゅっ、どぷんっ……!
びくっ、びくんっ……
「んぐっ、うっ、うあぁっ……」
射精の快楽が全身を突き抜け、キスによって心地よい性感に浸された全身は、さらに快楽が増幅されてゆく。
优しく、柔らかに射精に导かれてゆく感覚。体中が最高の快感に包まれていて、いつまでもこの快楽に浸っていたいと思わされる。もはや、総太郎の表情はだらしなく缓み、冴华の体をぎゅっと抱きしめながらキスを贪欲に求めるようになっていた。
(な、何も考えられない……もっともっと、冴华とセックスして、キスし続けていたい……)
そして、そんな快楽を味わわされ続け、さらに三度ほど射精してしまうと――総太郎はもうすっかり冴华の虏となってしまっていた。
长かったキスをやめて冴华が顔を离すと、総太郎は缓んだ顔に寂しげな色を见せた。
「あ、ああ……も、もっと、もっと続けて欲しいのにっ……」
「そう思ってくれるのは嬉しいわ。でも、そろそろ悦ばせてあげるのも终わりにしないといけなくてね。みんなを待たせてしまっていることだし」
そういえば、お互いの弟子たちはどうしているのだろうか。だが、少し考えを巡らそうとしたものの、すぐに総太郎は冴华とのセックスで头がいっぱいになってしまった。
「う、うう……ま、まだ、セックスをっ……もっと、射精したい……」
「ふうん、まあいいわ。お望み通り、最后に一発、思いっきり射精させてあげる。これでもう、さすがのあなたも射ち止めになると思うけどね。えいっ?」
そして、冴华は膣を缔めつけてくる!
にちゅううううぅぅっ!
「ひっ、ひぎいいいいぃぃっ……!」
びゅくっ、びゅくっ……びゅっ、びゅくっ、どぷっ……
「あっ、あひいいぃっ……き、きもちいいっ、きもちよすぎてっ、あ、あああぁぁ……!」
総太郎はなおも絶顶し続ける。冴华の膣肉はペニスに络みつきながら绞めつけ続け、そのおかげで総太郎のペニスは絶顶し続けてしまうのだった。
そして、そのままペニスが精液を冴华の膣内に吐き出し続け、もはや何も出なくなると、総太郎の快楽はさらに强くなる。ドライオーガズム状态で絶顶し続けることにより、今まで味わったことのない快感が间断なく袭ってきているのだ。
にちゅっ、ぐにっ、ぐにゅううぅっ……!
「うあっ、あっ、あああああぁぁ!」
びくっ、びくっ……
体を痉挛させながら、涙とよだれをだらしなく垂れ流し、総太郎はこの世のものとは思えない快楽に浸り続ける。
そして、冴华がようやく膣の力を抜いたときには、総太郎は体を完全に弛缓させ、呆けた顔を晒しながら冴华を见上げるだけだった。
「あ……ひ……」
快楽の余韵で痺れる体。もう思考もまともに働かないような状态だが、それでも総太郎の目は冴华の美しい裸体に钉付けになっている。
その冴华は、総太郎を见下ろして愉快そうに笑みを漏らした。
「ふふ……どうやら、ようやく仕上がったみたいね。これであなたは完全にあたしのものよ、総太郎」
いつの间にかポニーテールが解けて、茶色がかったロングヘアを垂らしている冴华。肩にかかったその髪を背中に送る仕草をすると、见事な丸みをしたおっぱいが小さく揺れた。
「さあ、どうかしら? 総太郎、あたしとの结婚を受け入れてくれる? もし受け入れてくれたら、今日ぐらいの快楽をたまには味わわせてあげてもいいんだけどねぇ」
そう言われて、もう拒めるような総太郎ではなかった。
「す、する……」
「え?」
「け、结婚する……俺を、冴华の夫にしてくれ……」
この快楽を失うことなど、もう考えられない。胜负に完败し、もはや冴华にはかなわないという意识があったことも手伝って、総太郎は完全な屈服宣言となるそれを口にすることに抵抗がなかった。
総太郎の口からその言叶を闻いて、冴华は愉悦の表情を浮かべた。
「ふっ、ついに堕ちたわね。分かっていたことだけど、セックスであなたを屈服させるのは格闘胜负で胜つことよりもよほど简単だったわね」
冴华は安堵と満足感が入り混じったような顔でひとつ息をつくと、総太郎に再び小さくキスをした。
ちゅうっ……
「む……んぐっ……」
短いキスだったが、総太郎は大きな喜びを感じる。どうやら、自分が心から冴华に屈してしまっているということをおぼろげに感じるが、それ以上のことはもう考えることができなかった。
冴华はやや嗜虐的な目をして、総太郎にささやきかけてくる。
「あなたはこれから、世界で一番嫌いな女の子と结婚しなくちゃいけないの。一生、自分からすべてを夺った憎い女のために尽くすのよ。それが、あなたがあたしに屈服した代偿。流派の技はもちろん、あなたの人生を丸ごとあたしに捧げてもらうわ。夫なんだから当然よね」
そう言いながら、冴华は総太郎の頬を抚でる。
「あたしは男を爱することはないから、夫となる男が嫌いな相手だろうと问题ないわ。世间体と、それに后継者を作るために必要っていうだけの存在だしね。ま、あんたなら练习台っていう役目も果たせるし、そういう意味ではそこらの男よりは価値があるけど」
これからのことを彼女が语るに及んで、ようやく総太郎は自分が口にした言叶がどれほど絶望をもたらすものであるか、理解できてきた。
だが、もう何もかも遅く、また、この运命を避けることはおそらくできなかった。総太郎は冴华の与える快楽に抵抗する気力も、また性技の実力もなかったのだから。
「心配しなくても、家事とかは分担してあげるから。奴隷夫とは言っても、神仓流を本格的に広めていくには総太郎の存在は必要不可欠だから、それなりに遇してあげるわ」
そして冴华は立ち上がり、総太郎のペニスを踏みつけた。
「あ、うう……」
「顽张ってくれれば、ちゃんとご褒美もあげる。こうやって、ね……」
ペニスをゆっくりと踏みにじる冴华。その行为に、総太郎はもう痛みとともに心地よさを感じてしまう。
(俺は、もう……冴华には、逆らえない……)
そう理解しながら、総太郎は再び体を震わせ、小さく絶顶する。
こうして、総太郎は神仓冴华に完全に屈服した。长きに渡ったライバル同士の戦いは、総太郎が一度たりとも冴华に胜てないまま终结し、斤木流は神仓流に吸収する形でその歴史に幕を闭じることとなったのであった。
冴华は総太郎の惨めな姿を见下ろしながら、喜びに体を震わせた。
「ついにあたしと神仓流が、斤木流に対して完全胜利したんだわ。これで母さんの无念も晴らせたし、あたしにとっての最高のハッピーエンドね。ふふっ……あははははははっ!」 内容来自
道场の中に冴华の胜利の高笑いが响き渡り、それを闻きながら、総太郎の意识は闇に落ちていったのだった――
13,066文字
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壊れた魔术师
何がいけなかったんだろう。
この前から俺の头にはその言叶だけがぐるぐると涡巻いていた。
こうなる前に、できることはあったはずだった。
こうなる前に、前兆があったはずだった。
こうなる前に、彼女を気遣ってあげればよかった。
だけど、そんな后悔では起こってしまった结果は変わらない。
俺がやることはただひとつ。
勇者として彼女を倒すだけだー。
足を踏みいれた馆はとても老朽化していた。崩れないのが不思议なくらいだ。恐らく彼女の魔法が闻いてるのだろう。
俺の名前はレイヴ。王国から正式に认められた勇者である。
この世界は魔族に侵略されていた。どうしようもないほど追い诘められ、人类灭亡までカウントダウンが始まるかと思われたとき、俺は勇者に选ばれた。
はじめは唐突で信じてもいなかった。だが、勇者に选ばれた翌日から一般村人だった俺の力は上级魔族の首さえ素手で引きちぎれるほどまで上がっていた。
その后俺は剣を学び、勇者として旅をしていた。
一人旅ではない。幼驯染みの魔术师が一绪だった。途中から回复魔法が得意な王国の姫も仲间になった。
何度も苦难を乗り越えて、俺は人类が夺われた领土の8割を夺い返していた。何度も苦しい戦いをしていくうちに、俺と姫様は互いに惹かれあい结婚を前提に付き合い始めていた。
戦闘としても、人生としてもまさに最高の时期ーそう思っていた。
幼驯染みの魔术师が、あんなことをするまでは。
古びた馆を探索し、いくつかの扉を潜った先で、ついに俺はこの事件の元凶を见つけた。
黒のニーソックにミニスカート、薄手の生地の衣类の上に俺が买ってあげた黒いローブを身に付けて、トレードマークの魔女帽を被った姿。何度も何度も见てきた、见惯れた姿。その顔は帽子で见えなかったが彼女は俺を见ると微笑みを浮かべていった。
「ぁ、やっときてくれたんだぁ……」
自分の行为を棚にあげ、俺との再会を喜ぶ彼女。
彼女こそ、俺と共に旅をしてきた幼驯染みの魔术师ーレミィだった。
ことの発端は三日前。俺と姫様が付き合いはじめて1週间がたとうとしたとき、それは突然起きた。
姫様が魔族に拐われたのだ。
そもそも、彼女には退魔の魔力と言う特别な魔力があった。魔族にとって最大の弱点ともいえる特异な魔力を持った彼女は魔族にとって邪魔な存在だ。彼女をつれた俺たちは何度も魔族とぶつかり、この度にある时は命を狙われ、ある时は连れ去れかけた。
その度に俺たちは魔族とぶつかり迎撃していたのだがーその日ついに拉致されてしまったのだ。
その原因が、彼女ーレミィである。
その日レミィはあろうことか、俺の食事に睡眠薬を混ぜ、更に睡眠の魔法をかけた上で彼女の后ろから魔力封じの手锭をかけ、彼女を魔族に引き渡すと自らも姿を消した。
はじめは魔族に操られたのかと思ったが调査を続けていくうちに、彼女がちょうど一週间前ーつまり俺と姫様が付き合いはじめてからずっと、魔族と秘密裏にコンタクトをとり、绵密な计画をたててたことがわかった。
「ごめんね……。すぐにでも话したかったんだけど……色々ごたついてて。だから、见つけてくれるのを待ってたんだ……。すごい久しぶりだよね?レイヴと二人きりで话すの……。」
「レミィ。……姫様はどこだ?」 本文来自
「……。探せばいるよ。この馆のどこかに。捕虏として扱うって言う魔族との约束だから。法律に则った待遇は、约束する。」
姫様と俺が口にしたとたん、目に见えて彼女の态度が変わった。苛立ちと、心のそこからどうでもいいと言うような态度。その态度から予测していたことではあったが、动机がすぐに俺だと理解した。
レミィは昔から俺なんかよりずっと头がよかった。だが同时にどこにいくにしても彼女は俺についてきた。俺が勇者になると决めて剣の修行を始めると一年もしないうちに彼女はそれまで学んだこともなかった魔法を勉强し、仅か一年もしないうちに村一番の魔法の使い手となり王国でも10人しか选ばれない最强の魔法使いの称号"大贤者"を得た。
けど彼女は俺ちょっと影で俺の阴口を叩いた村人に大ケガを负わせたり、俺に喧哗を吹っ挂けてきたチンピラを半杀しにする危うさもあった。
俺に嫌がらせをしてきた政治家は数日で失脚し、俺をバカにした记事を书いた记者は后に勤めていた会社が破産して倒産した。
彼女は俺のことになるととたんに极端な行动に出るアブナイ节があるのだ。そしてそれはきっと俺への爱情表现であったのだ。でも俺はそれに気づかないふりをしつづけ、ついには姫様と结婚してしまった。彼女はそれに耐えられなかったのだろう。
この一件は、必ずしも彼女のせいではない。少なからず俺が原因だ。けど、起きたことはもう変えられない。
「ー。王国からの最终通告だ。今すぐ姫様を无伤で引き渡せ。それなら、命を夺うような処罚は与えない。さもなくばー」
「别にいいよ」
くだらない、と吐き捨てるように彼女はいった。
「姫様も、私の命も、王国も世界もどうでもいい。ねぇ、レイヴ?もし姫様を无伤で引き渡したらレイヴは私と结婚してくれる?ずっと一绪にいさせてくれる?」
「それはー」
それは、彼女からはじめて向けられた告白だった。耐えられなくて、辛くて、彼女にここまでさせるほど俺は彼女に爱されているのだろう。それだけのきもちを俺に向けてくれてるのだろう。そのことはすごい嬉しい。ーでも。
「ごめん。それは、无理だ。俺はもう、姫様を选んでしまったから。」
「……。そう、だよね……。レイヴはそういうよね……」
そういって俺から目をそらして顔をうつむくレミィ。あぁ、本当に。自分はどうすればよかったんだろう?どうすればこんな结末を迎えなくてよかったんだろう。
「ーレミィ。王国からの依頼だ。もし姫様を无伤で引き渡す条件をお前が饮まない场合、俺がお前を杀す约束になってる。」
「……。」
返事がない。动かない。うつむく彼女を视线にとらえながら俺は静かに剣を构える。せめて、苦しませないように一撃で。
「……ーこれまで、ありがとう」
俺は彼女の心臓をめがけ剣をつきいれるため、走り出そうとー
「……じゃあ、レイヴの间违った気持ちを正してあげないとね?」
「ーぇ」
俺が踏み込むより早くレミィはローブを広げた。黒いローブの下から魔术师としての衣服に包まれた彼女の柔肌が、剣を突き立てんとする俺を迎え入れるかのように広げられる。そして同时に鼻腔にふわりと、甘い匂いが届いた。嗅いだことのない、けれど决して不快ではない、甘く、浓い匂い。
「なんー……っぁ……」
なんだこの匂いは、と闻く前に俺のからだに异変が袭った。背筋にぞわぞわとした快楽が走ったと思った瞬间全身から力が抜け、走り出そうとしていた俺の体はそのまま前に倒れこんだ。辛うじて剣を杖がわりにすることで持ちこたえたがそれでも全身が一切不快感のない倦怠感に袭われ、力を込めるのが难しい。何が起こったかを思考しようとした头もまるで甘い匂いの糸に络めとられたように回らない。头がぼんやりして、方向感覚さえ失いそうなる。この心地よい脱力に身を任せたい诱惑に刈られる。 本文来自
「なにを、し……た……ぁ………」
なんとか质问をしようとしてレミィを见た瞬间どくんと心臓が波打った。彼女は幼驯染みで、一绪に冒険して。裸とは言わなくても服を着た彼女なら见惯れたはずなのに。ドキドキが、止まらない。
魔术师の衣类はどれも露出が多い。曰く、魔力の流れが感じやすいとかなんとか言っていたのを覚えている。レミィのローブの下の衣装もまた、例に漏れず露出が多い。ミニスカートは少しでも动けばパンツが见えてしまいそうで、ニーソックとミニスカートのあいだから见える真っ白な太ももが黒を基调にした服装のせいでより强调される。肩もお腹も出していてそのどれもが男の俺なんかと比べてもとても柔らかそうで魅力的に见える。そしてなにより、彼女の胸だ。
10歳くらいの顷から大きくなり始めたレミィの胸は、10年たった今ではローブの上から膨らみがはっきり见えるほど彼女の胸は大きくなっていた。その上でその魅惑的な谷间を见せつけるような布生地は大きさだけでなくその胸の柔らかさすら视覚で诉えてくるようだった。
俺だって男子だ。彼女の大きな胸をみて思春期の顷はオナニーをしてたこともある。姫様とであってからはそんなことしてないが、それでも今改めて见せつけられると、それはあまりに魅力的で、妖艶だった。
「くすくす。どうしたの?……剣突き立てなくていいの?ほら、おいで」
「っぁあっ……まっ、やめ……しゃべ、るなぁ……」
匂いだけでない。声も甘く脳に络み付くように闻こえる。匂いもいっそう浓くなり息をするだけでも声を闻くだけでも全身にピリピリと快感がはしり、更に力が抜けてしまう。
なんだ、これは。
なにをされたんだ、俺は。
「戸惑う顔、かわいいね……レイヴ……。」
困惑する俺をよそに彼女はそんな独り言を呟くとそのままその场で一回転する。より甘い匂いが强くなりからだに走る快楽の电撃がいっそう激しくなる。その快楽に耐えきれずついに膝をつい倒れをみてレミィは自慢げに语りだした。
「これね、サキュバスの魔法なの。フェロモン?メルトアウトっていうとっても强力な魔法……。男の人が嗅ぐといろんな効果があるの。精力増强、色気への耐性低下、匂い出してる人を好きになったり、発情しちゃったり、敏感になったり……思考を邪魔しちゃったり。ほんとにいろんなえっちな効果がね……??」
「サキュバスの、魔法……だと……!?」
「そう。お姫様を差し出した交换条件で好きな魔族の魔法を教えてくれるって言われたから……サキュバスの魔法、おしえてもらったの。サキュバスは、わかるよね?」
知っている。俺たちのメンバーで俺だけが男ゆえにサキュバス系统で狙われるのが一番危険だと教えてくれたのはそもそもレミィだ。
そのため冒険では魅了に一番耐性を持つ、姫様をメインにレミィが援护をし、邪魔が入らないように周囲の雑鱼を俺が倒す戦いかたをしていた。故に、俺が直接サキュバスと戦ったことはない。
これが、サキュバスの魅了魔法。头が痺れ、力は溶け落ち、桃色に全身を染め上げられるような感覚。そのうえどこまで言っても不快感はなく、それゆえにどんどんとこの感覚に溺れてしまいそうになる。
「レイヴは魅了に全く耐性ないもんね……。いつも私とあの女で倒すようにしてたし、魅了もちは最优先で杀してたから。ここまでの冒険で魅了なんてなったこと、ないもんね……。どう?はじめての魅了魔法の感想は……くすくす……??」
「ぅ、あぁぁ……しゃ、喋るなぁっ……声、だけでも、これっ……」
「うん、わかるよレイヴ……。声だけで気持ちいいんだよね?闻いてるだけで背筋ぞわぞわして、头ぽわぽわして、うまく头、回らなくなるんだよね??でも……私が教えて贳った魅了魔法は、ひとつじゃないんだよ……??」
すっ…とレミィがポーズをとる。脇を见せ、おっぱいやお尻のボディラインを强调するような扇情的なセクシーポーズ。その姿に思わず目が钉付けになる。そしてー
「まずこれが初级の魅了魔法…えいっ??」
「ぇ……?ぁ、あああああ!?」
レミィが、とても可爱らしくウインクした。
とたんにハートが弾けレミィからハートの形をした魔力のオーラが流し込まれる。そのハートが俺のからだに入り込む度にピリピリと甘い痺れが全身に走り回る。目の前のレミィがより一层可爱くみえてドキドキが止まらない。
「これが、チャームウインク……だよ??低级のサキュバスも使ってくる魅了魔法……。レイヴくらいの戦士になれば魅了耐性がついてこれくらい耐えられるんだけど……レイヴに耐性はついてないもんね……??ほら、もう一回……ぱちっ??」 copyright
「なぁっ??ぅ、あぁぁ……??」
「レイヴはこっちのポーズの方がいいかな……?ぱちっ??それともこっち?……ぱちっ??」
レミィが、ポーズを次々と変えながらウインクをする。胸を强调してたり、足をみせつけるようなポーズだったり、どれも妖艶で可爱らしいポーズ。そして决まってポーズをとりおわるとチャームウインクを飞ばしてくる。
レミィはただウインクをしてるだけ。そして俺はそれをみてるだけ。なのに、まるでからだの内侧から抚で上げるような快感が全身を袭ってくる。その上、ウインクをみればみるほどレミィにどんどん见惚れてしまう…。
柔らかそうで大きな胸が揺れる度にドギマギし、彼女がポーズを変える度にどうしても视线がみえそうで见えないスカートに惹き付けられる。
可爱い。とにかく、レミィが可爱い。
思考がレミィで埋め尽くされる。兴奋で息が荒くなる。レミィのことしか考えられなくなりそうなのを必死で耐える。
「ふふっ……顽张るねレイヴ……。私はそういうレイヴの顽张り屋さんなところ、好きだよ……??」
「あぁぁぁあああっ!そういう、ことを……言う、なぁ……!」
『好き』。
レミィにそういわれただけで全身にぞわりとした刺激と圧倒的な幸福感に袭われる。頬が缓むのを必死に耐える。反撃とか、攻撃とか、そんなのを考える余裕はなかった。自分の心と戦い、冲动を押さえ込むのだけで必死だった。
「じゃぁ次の魔法いくね…。中级のサキュバスあたりからよく使ってくる魅了魔法なんだけどね…」
必死な俺を他所にレミィは楽しそうにそう告げると人差し指と中指を自身のぷるぷるの唇にもっていく。そこからどんな动作を行うのかは明らかだった。
「ん……chu??」
「ぁ……」
可爱い。あまりに可爱すぎる投げキッス。
来るのがわかってたのにその可爱さに见惚れ、警戒も何もかもを忘れて惚けってしまう。
头のなかで何度も缲り返される投げキッスの动作。
その妄想にとらえられた俺は…投げキッスと共に放たれたハートがふわふわとゆっくりとした轨道で、けど确実に自分に近づいてきてることにすら気づかなかった。そして…ハートがぽわんと、俺に当たって弾ける。
「ひっ……ぁ、あ……??」
そして今度の魅了魔法の効果は、絶大だった。
ハートが弾けた瞬间、思考は完全にフリーズした。なにも考えられなくなった。音も、匂いも、视覚も、あらゆる感覚がレミィを感じることにだけ使われ、それ以外に使われなくなる。必死に押さえ込もうとしてた心から「すき」が溢れだし、それ以外の感情が恋慕の浊流に呑まれて押し流されていく。
「あはっ……??効果觌面だね……??かわいいよ、レイヴ……??もっといじめたくなっちゃう……??」
頬を赤めらせ、サディスティックな笑みを浮かべるレミィ。俺が始めてみる彼女の素顔。だが、それさえもう异常なまでにかわいく、きれいで魅力的に见える。声を出したら「すき」が漏れそうで、ただ一度でも「すき」が漏れたら大変なことになりそうで。俺は必死に口を开けないように脱力したからだに无理に力をこめて、耐えた。
しかし、それを许すほど彼女は甘くない。
レミィは数歩前へ歩き俺へ近づく。
剣を振れば届く距离だ。确実に彼女の首をとらえられる距离だ。けど、俺にそんな余裕はない。
彼女が近づく度にあの魅惑的な柔らかで真っ白な果実がぷるんと揺れ、その揺れと共にその豊満な果実から彼女の匂いーフェロモン?メルトアウトが一层浓くなり、より脱力を诱い、より恋心を煽ってくる。とにかく、剣なんて震えない。なんとか隙をみつけて逃げなければならない。必死に俺のあたまの、仅かに残った理性が警钟を鸣らす。
それでも、俺の足は一歩も动かなくて。
それでも、俺の视线は彼女からはずせなくて。
それでも、俺の鼻は彼女のフェロモンを嗅ぎつづけて。
それでも、俺の耳は彼女の声しか闻こえなくて。
それでも、どうにかしないといけない筈なのにー
「はい、ぱふん??」
「あ、ぉあ、ひ……??」
声になってない悲鸣が、俺の口から溢れた。
レミィは限界まで近づくとその魔性の胸の谷间に俺の头を招き入れ、包み込んだのだ。
柔らかでしっとりとしたおっぱいが俺の肌に吸い付いてくる。抜け出そうと首を动かすと吸い付いていたおっぱいが名残惜しそうな感触を残しながら离れ、すぐさま次の乳肌が顔にくっつく。魔乳を味わえば味わうほどその快楽と共に力を夺われ、同时にもっとこの谷间に顔を埋めたい、抜け出したくないと言う欲望が急激に膨らんでいく。
「ほら、レイヴのお顔、私のおっぱい监狱に闭じ込めちゃった……??どう?きもち、いいかな……??」
嬉しそうに、でもどこか不安そうに闻いてくるレミィ。なるほど、确かに此処は监狱だ。
键のかかっていない监狱。抜け出そうとすれば抜け出せるのにその甘いフェロモンが、柔らかな感触が、极上の快楽が。俺の头と心をとろかせ缚り付け抜け出せなくなる魔性の监狱。囚われたものが抜け出せなくなる底无し沼のような监狱だ。
「抜け出そうと暴れていいの???そんなに激しく动くと……くすくす……??大変なことになっちゃうよ??」
レミィの警告。しかし、俺はとにかく逃れようと焦って体を何度もくねらせて逃げようとした。既に冷静な自分を失っていたのだ。
结果としてもがけばもがいただけ何処までも沈み込むようなしっとりとした乳肌を頬や顔に擦り付けるかたちになってしまう。どう体をうごかしても极上の感触が、甘い痺れを脳に送りこみ、体の力という力が抜けてしまう。『とにかく抜け出そう』とする俺の意思を无视しておっぱいから発せられる『もっとここにいていい』という命令を脳が受け取って実行してしまう。いつしか俺の抵抗は抵抗とも呼べないほど弱々しいものになってしまった。
「抵抗しなくても……気持ちよくなっちゃうでしょ……??」
レミィの言う通りだった。一度自ら顔を魔乳に擦り付けることを覚えたからだは危険だと理解しているのにビクビクと体を震わせてしまう。それに、抵抗をやめたことで彼女の、レミィの甘い匂いをより强く意识してしまう。
鼻の奥に络み付くような重くて甘い、それでいて不快感もない、吸えば吸うほど浓密な桃色の雾が头のあちこちを隠して、なにも考えられなくなっていくような感覚に袭われる匂い。危険なのは分かってるのに、なにが危険なのかを思い出そうとすると思考に雾がかかり、酷くこの匂いがほしくなって吸い込んでしまう。そのフェロモンの快感で体がびくつき、力を夺うおっぱいの感触に绊され、気づくと脳内に新たな桃色の雾が现れる。どんどん、考えられることを狭められていく。彼女の事しか、レミィのことしか考えられなくなっていく。
「まだ、ズボンの上からだよレイヴ…??ほら、こうやって……」
「ぇ、ひぇ、なっ、なんでっ…!?」
レミィが指をならすと共にズボンとパンツが一瞬で脱がされた。これもサキュバスの魔法、なのかは定かではないがズボンとパンツがなくなったことでレミィの掌と俺のどろどろの肉棒を隔て、仅かでも快感を抑えていた壁が、なくなってしまった。
彼女の言う通り、まだズボンの上から、しかも指だけでもこれだったのだ。そのまま握られたときの快楽を与えられたら俺が壊れることなんて想像するのも容易いものだった。
でも、俺は逃げることが出来なかった。逃げる力はもう残っていない。仅かに抵抗する力さえ顔を包み込む魔乳とそこから立ち上るフェロモンにとかされてしまっている。
「ほらみて、レイヴ…」
彼女はそんな无抵抗ながらも反抗しようとする俺を知ってか知らずか、胸の谷间から顔をずらすと自分の掌を见せてきた。
黒く、すべすべした手袋を缠った、彼女の掌。
その指一本一本がクラゲの触手のようにくねくね动くそれは、あまりに妖艶で、たちまち俺は目をそらせなくなる。
「ぁ、あー…」
「今からレイヴのおちんちんは私のこの手に包まれちゃうんだよ……??极上の肌触りの手袋に包まれた……とーっても暖かい私のお手々に包まれちゃうの……??しかも……」
もう一本の手で指をならすと彼女の小物入れから一本の小瓶が浮いて出てくる。瓶のなかには蜂蜜のような、みてわかるほどの粘性をもった琥珀色の液体が入っている。その盖が彼女の魔法によってひとりでに、ゆっくりと、俺に见せつけるように开いていく。そしてー
「ぁ……??」
「くすっ…??」
瓶が空いたとたん浓密な『甘さ』が俺の鼻腔を贯いた。この匂い、この甘さ。间违いなく彼女の、レミィのフェロモンだ。しかも、それを何倍にも浓くして浓缩したような重く、こびりつく匂い。それを一嗅ぎしただけで、强烈な甘い快楽が鼻から脳へ、脳から脊髄へ、脊髄から全身へゾクゾクとはしり、気づいた时には俺は変な声をあげていた。
「期待、しちゃったんでしょ……??」
「ちがっ、そんなんじゃ……」
彼女の発言を否定しようと言叶を并べようとするがそれよりはやくレミィは魔法で浮かせた小瓶をさかさにし、その液体を自分の手にまぶしていく。
にちゅ、ぬちゅという粘液の音と共に黒い手袋が液体でコーティングされていく。
その、あまりにいやらしい光景に并べようとした言叶は雾散し、脳内を再び桃色に染め上げられてしまう。あの手に包まれた时の快楽を、その时の光景を嫌でも思い浮かべてしまう。
そして、そんな俺をみてレミィは再びクスリと笑う。
「もうそんなにみて……??やっぱり期待してるのね、レイヴ……??」
「だ、だから、违……そういうのじゃ、なくて……」
「じゃあどうして逃げないの?どうして无理にでも抜け出さないの……?」
「それは、れ、レミィが……おっぱいで、力……ぬけて……」
「まだ言い訳するんだ……??じゃあレイヴにひとつ、质问するね……?」
违う。言い訳じゃない。力がぬかれてどうしようもないだけで、期待なんてしていない。
必死に、自分に言い闻かせるように何度も言叶を思い浮かべる。
そう、俺は期待なんてしていない。逃げられないだけ。そんな、期待なんて。してるわけがー
「なんで、レイヴはそんなに嬉しそうなの……??」
「ーぁ……」
そのレミィの指摘は、俺が取り缮っていた理性のメッキを、引き剥がすのに十分だった。
逃げられないだけ。期待なんてしていない。
いや、そんなのは言い訳にすぎない。
俺は……本当のところ俺は期待してしまっているのだ。
直感的な恐怖心より、想像できる未来より。
レミィが与えてくれる快楽を、期待してしまっているのだ。
王から与えられた命令より、勇者としての使命よりー姫様より。
耐えないと。我慢しないと。快楽に狂わされていく心のなか、必死に理性をかき集めてー
『なんで、レイヴはそんなに嬉しそうなの……??』
「ーぁ??」
彼女の言叶が脳裏によみがえった。
そう、だ。そうだ。さっき、认めてしまったではないか。俺は期待してしまっていたと。逃げようとする心さえ言い訳だと。
もうすでに、负けてしまっているんだと。
心のささえが无くなった途端、俺の理性はがらがらと音をたてて崩れていく。瓦砾となった理性を、快楽と言うレミィの蜜が溶かしていく。
ああ、もう俺はレミィに负けてしまったんだ。もう、姫様よりレミィを优先してしまったんだ。レミィをー好きに、なってー
「ーレイヴ、好きだよ??」
「ーあ??」
心を読んだような嗫きが、とどめになった。
「れ、れみっ??れみぃ??す??すきっ……??俺もっ……す、きぃ……??」
「あはっ??やっと素直になってくれたねレイヴ??腰がくがく自分から振って私のお手手の感触をむさぼって……??そんな可爱いレイヴ、私も……すーきっ??」
「ひ、ぁっ??れみっ??それっ??耳元でさ、さやかれる、とぉっ……??」
「耳元で嗫かれるの、すき、なんだね……??いいよ??もっとしてあげる……??すき??レイヴ、すき??すきだよレイヴ……??だーいすき……??」
落ちていく。堕ちていく。溺れていく。
心のささえを失った俺は、まるで吸い込まれるように彼女の作った快楽でできた堕落の海へ沈んでいく。一度快楽を认めてしまえば、落ちるのは秒読みだ。ジェットコースターが坂道を下るように、俺の心はレミィの思いがままに落ちていく。慌てて这い上がろうとしても、その気持ちが身体を动かす前に新たな快楽が、彼女の嗫きが俺を缚って络めとる。
あまい嗫きが脳の奥に响いて反响する度、头を灭茶苦茶にとろかして好意だけを残していく。
そしてその嗫きと、好意と、快楽があれば人の恋慕を暴走させるには十分すぎる働きをする。
「おっ??おれっ??おれもすきっ??れみぃ、が、すきっ??あっ??だ、だいすっ…きぃ……??」
「知ってるよー……??私もレイヴがすき??だーいすき……??あ?い?し?て?る??」
「あぁぁぁあああっ……??」
好意の过剰摂取。ただただ甘い嗫きを耳から彻底的に注ぎ込まれる。それに溺れて「すき」と伝えれば「だいすき」と返され、「だいすき」と伝えれば「爱してる」と返される。次第に注ぎ込まれる好意も、膨れ上がる恋慕も大きくなって、危険になっているのに、今の俺はそれさえも気持ちよくて。堪らなくて。そして、そんな俺の心と身体に追い讨ちをするように粘液が络み付いた、彼女の暖かな掌が俺の肉棒の弱いところをしつこく虐めぬく。
指でできた狭い轮っかをくぐらされたと思えばカリをそのまま刺激する。亀头を触手のように蠢く指でくにくにと弄び始めれば、それにあわせて気纷れに爪先で裏筋をカリカリと引っ掻く。
先端ばかり责められ意识がそっちに持ってかれた途端、今度は蜜がたっぷり络み付いたその掌で棹を包み込み、さらさらとした手袋の感触と、掌の柔らかな感触と、蜜によりねっとりとした感触の、本来同时に発生しない感触を一斉に刻み込んでくる。
こんな、人とは思えない快楽と、染み込んだ魅了と、爆発した恋慕にのまれた俺は、もうすぐに、射精しそうになってしまって。
「れ、れみっ……??レミ、ぃ……??」
「うん、分かってるよレイヴ……??射精しそうなんだよね…??もう我慢、できないんだよね……??びゅー……びゅーって気持ちいい射精、したいんだよね……??」
レミィがにっこりと笑ってる。押し付けられるのがやめられていた魔乳が再び顔を包んでくる。快楽を受け入れてしまったからか、フェロモンもさっきまでより浓くて、一瞬で思考も视界も桃色の雾に侵食されてしまう。もうなにもわからない。もうレミィしかみえない。もうレミィのことしか考えられない。考えたくない。
「いいよ……??沢山だそうね……??このまま射精すると、もう私の魅了魔法が魂にまで定着して、二度ともとに戻らなくなるけど……いいよね??」
「ぇ??あ??……ぇっ……」
まだ理性が残っていたのか、本能的な何かか。
レミィの言叶に突然、寻常じゃない恐怖心が生まれる。头から血が抜けて、冷静さか戻ってくる。
彼女は何て言った?わからない。ちゃんと闻けてなかった。けど、俺は今何をしてるんだ?
俺はレミィを倒しにきたはずだ。俺は、そう、俺はなにか大切なものを取り返して、谁かの依頼で彼女を倒しにきて。
魅了渍けの头からまるでパズルのピースを集めるように自分の目的や现状を理解していく。少しずつ壊れた理性と心をかき集めて修复していく。だがー
「それじゃぁー」
レミィが、そんなことに気づかないわけもなく。
俺のからだの状态はなにも変わってなく。
そして、レミィが俺の理性と心がなおるのを待つわけもなく。
「イッちゃえ……??レイヴ……??イッて、壊れちゃえ……??」
「いっ……!???」
ぐちゅぅ。にちゅ、ねちゅ。
ぢゅこ、ぢゅこ、ぢゅこ、ぢゅこ。
ぢゅこぢゅこぢゅこぢゅこ。
レミィの手は、どんどん早くなって。
俺の、弱いとこ、的确に、责めて、きて。
头、白と桃色でバチバチと痺れて。
「あ゛??だ??や゛だっ??ごわれっ??ごわれゅ??でる??で、あ゛??ああ゛あ゛ぁっっっ!!」
どくどくっ……びゅるっびゅるるるるるるるっ……
「はーい……??びゅー……びゅるるー……??気持ちいい、気持ちいいね、レイヴ……??」
「が……??ぁ、ひ??あぁぁ……??」
射精した瞬间、头を支配していた恐怖心も、何もかもがどうでもよくなった。気持ちいい。とにかく気持ちいい。こんな、こんな気持ちいい射精あり得ない。そう考えてしまうくらい気持ちよくて。そして、目の前のレミィがその気持ちよさの分すきに成っていく。理性も心も、これまでの记忆さえ精液として吐き出したかのように头のなかも心のなかも全てをレミィでいっぱいにする。ただそれが気持ちいい。
「ねぇ……レイヴは私と结婚してくれる?ずっと一绪にいさせてくれる?」
レミィのその告白はどこかで闻いたことがあった気がした。どこで闻いたのだろうと考えようとして、ーレミィが再び俺の肉棒を握りしめたことですべてがどうでもよくなった。
「うん……する……レミィと、结婚する……から……」
「ほんと?じゃあレイヴは私のことすき?世界で一番爱してくれる?…お姫様より爱してくれる?」
レミィのその言叶はどこか确认してるようだった。だが、俺にはそんなこと関係ない。姫様?谁だっけ?どこのお姫様かなんて知らないが、俺にとっての「姫」はー
「うん…爱してる……??レミィが、一番すき…??」
ー彼女だけだ。
「あはっ……??じゃあこれからずっと…ずーっと一绪にいようね、レイヴ……??」
「もらった!」
冴华が飞びかかってくる。今度グラウンドに持ち込まれれば、完全にアウトだ。
が、冴华はいきなりつんのめり、畳の上に膝をついた。
「なっ、え……?」
冴华の顔に大きな戸惑いが浮かぶ。
倒れた総太郎だが、気を奋い立たせ、すぐに立ち上がって攻撃に移る。
「うおおっ!」
「はっ!」
冴华は慌てて立ち上がる。総太郎は突きを缲り出してゆくが、急いで打ったなんの工夫もない突きであり、冴华相手では避けられてしまう可能性は高かった。
が、冴华はバックステップをしようとして、やはりバランスを崩して倒れかかる。
「な、なんでっ!」
そこに、総太郎の突きが炸裂する。
ドスッ!
「がふっ!」
冴华は悲鸣を上げ、背中から畳に倒れた。
腹に直撃したのだ。充分に腰が乗っていない突きだったが、それでも充分なダメージがあったはずである。
「げほっ、げほっ! くっ、そ、そんな马鹿なっ!」
冴华は立ち上がる。総太郎はなおも攻めかかった。これまでにないチャンスだ。
(ここで决めるんだっ、立て直す隙を与えるなっ!)
総太郎は、ややふらつく脚を必死に动かして前に出ながら突きを连続で仕挂けるが、冴华はそれを軽快にさばいてしまう。さすがに技术は相当のものがあり、クリーンヒットを夺えないが、しかし冴华が隙を见て打ち返してくる攻撃に秘法の気配はなく、総太郎はラッシュで押し続けることができた。
(効いている!)
そのまま攻めてゆく総太郎。突きのラッシュを见せてから、ふいにローキックを见舞う。
ビシッ!
「あうっ!」
冴华は防御しようとするが、一瞬间に合わずに左ふくらはぎのあたりにヒットする。
「ここだっ!」
総太郎は、がくりと冴华の脚が折れたのを见て突きを放つ。クリーンヒットすればトドメになるような重い突きだ。
が、冴华は総太郎の腰を入れた突きをさばきつつ、思い切ったように右足だけで后ろに跳んだ。
総太郎は歯噛みする。
「くっ、焦ったかっ!」
やっとやってきたチャンスだった。倒さねばならないと思ってモーションの大きい技を出してしまったが、结果的に冴华に余裕を与えてしまった。ここはスピードのある刹涡拳などを出すべきであったろう。
が、総太郎もフットワークが充分でなくなってしまっており、足运びの鋭さが必须な刹涡の技をとっさに出せる状态ではなかったかもしれない。
「ふうっ……」
とりあえず総太郎も危机は脱したのだ。それでよしとすべきであると意识を切り替え、ため息をつく。
そして冴华は。さすがに、その顔には动揺が浮かんでいる。
「……ど、どういうこと? どうして、秘法が――」
そう、冴华は秘法を使えていない。
「见えなかったようだな」
「な、なにかしたの?」
「わざわざ教えてやる义理はないだろう。自分で考えることだな」
「くっ……!」
総太郎が冴华の左の钩突きを受けたとき。とっさに右の抜手で冴华の脇腹を突いていたのだ。
冴华がフック気味のパンチを打ってきたのを见て、チャンスだと思ったのだ。フックの轨道ならば、その下をぬうように打ち返せば相手には见えないはずであり、実际冴华に见切られず突くことができた。
(万が一にでも视力の秘法で见切られたら最悪だから、见られないような打ち方をしなければと思っていたが、どうやらうまくいったな)
分の悪い赌けでもあった。あの钩突きをかわせなければそれで负けていただろう。纸一重であったが、どうにか巻き返すための一手を打てた。
蓄积されたダメージによって脚はがくがくと痉挛してしまうが、ためらっている场合ではない。総太郎は前に出る。
「いくぞ、今度は俺の番だっ!」
「うっ!」
冴华は受けの构えを取る。自分の状态が分からず、戸惑っているようだ。
総太郎は震える脚に活を入れるようにして前に出る。
「うおおぉっ!」
柳影のステップから连続攻撃を缲り出してゆく。まだ秘法封じは効いているようで、冴华はそれらを普通にさばくことしかできない。
「くらえ、双牙闪斧!」
左のフックと右の中段蹴りを同时のタイミングで当てに行くという、苍月の型に含まれる技だ。奥义ではないが、防御のしにくさでは斤木流の技の中でも际立った技である。だが体轴を保つのが难しく、総太郎はうまく打つことができたことはあまりない。
が、このときは奇迹的なほどに腰を入れながら轴を乱さず打つことができた。
ガシィッ!
「あうぅっ!」
フックは防がれたが蹴りは直撃し、冴华の体がぐらりと揺れる。
が、ダウンを夺うまではいかない。総太郎も次の技に移行するのに时间がかかり、取り逃がしてしまう。
「くっ、はぁ、はぁ……」
冴华は息を切らせ、肩を上下させている。男女、そして体格の差による体力差は大きいのだろう、少し総太郎が攻势に出ただけで今までの内容の差が急速に缩まる。
冴华が知らない技を出すことは确かに有効だ。仓桥のアドバイスは正しい。明らかに冴华の対応力が働いていないのが分かる。
が、これでトドメをさせるかというと、それも难しい。冴华の知らない技を缲り出すにしろ、そういうものは総太郎も充分な形で习得できているわけもなく、にわか仕込みの技ではフィニッシュブローにはなりえない。
やはり、最も得意とする技で决めなければ、冴华に胜つことは不可能だと総太郎は思った。
(まだいくつか使えそうな技はあるが、あくまで补助で使うべきだ。さて、あとどれくらいチャンスがあるだろうか)
间を置かず、総太郎は踏み込む。
が、放った突きは冴华に軽々と受け止められてしまった。
「あ、使える……?」
どうやら秘法封じは解けたようだ。
(もう终わりか。さて、また秘法封じを打ち込むことができるか?)
それができるかは微妙なところだが、决めることができれば有利にやれることは确认できた。それだけでも収穫は充分だ。
秘法の复活した冴华との攻防は互角で、いったん距离を取ると冴华はため息をついて汗を腕でぬぐった。どうやら秘法が使えるようになったことで、心の落ち着きを取り戻したようだ。
そして、冷静になってしまえば、冴华は的确な分析をしてくる。
「ふうっ。なるほど、どうやらあなたが秘法を封じてきたのね。さっき、一瞬だけ脇腹に钝い痛みがあったから、あれはツボを打たれていたってことかな」
総太郎はさすがに惊く。
黙っていると、冴华は表情も変えずに続けてきた。
「黙っているのがなによりの証拠ね。古武术らしいやり方だと思うけど、そんなものを奥の手に隠し持っていたなんて、あたしも油断したわ」
「……よく、分かったな」
「そういう技法があるということは知っていたから、思い返してみたら、なにをされたのか理解できたの。しっかし、秘法を封じる技を研究してくるなんてセンパイもやるじゃん」
冴华はさすがに知识が豊富だ。総太郎がやったことは、あっさり看破されてしまった。
ツボのポイントも悟られたということは、おそらくもう打ち込むことは困难であろう。通常ならば打つのが难しい位置のツボなのだから。
(まあいい、秘法封じは充分に役立ってくれた。冴华の动きも钝っているし、あとは俺自身の力で胜つしかない)
圧倒的な不利な状况は脱することができた。あとは胜つことだ。
「でも、もう二度と変な技は食らわないから!」
冴华のほうから前に出てくる。総太郎にペースを渡したくないのが见え见えだ。
総太郎もそれを迎撃しようと自分から踏み込む。ラッシュ合戦となるが、冴华の体力を消耗させたことで、先ほどまでよりは渡り合えるようになっている。
「でりゃっ!」
「くっ……!」
総太郎はあくまで冷静に、しかし前に出ながら冴华のラッシュに対抗してゆく。
本能の部分ではこれ以上なく攻撃的になっており、体はどんどん前に出たがっている。しかし头は自分でも惊くほどクールだ。
これ以上なく理想的な心身の状态をしている。そのおかげで、ここにきて総太郎は冴华とまったく互角の攻防をすることができている。
(いけるな。秘法封じがもう使えなくとも、俺は冴华に劣らない戦いができる)
しかし、あくまで互角のレベルであり、押し切るにはまだ决め手が必要になるだろう。
それをどうするか忙しく头を动かして考えていた総太郎だが、先に冴华が动いた。
「ふっ!」
冴华は打ち合いを嫌がり、総太郎のフック轨道のパンチに合わせて袖を掴んでいた。
(组技に来る気なのか?)
と思ったが、自ら胸を総太郎の腕に押し付けつつ、のしかかるように肘打ちを打ってきた。
「うおっ!」
まさか组んでからの打撃とは思わず、とにかく腰を回して掴みを振り払って避ける総太郎だったが――
「そこっ!」
総太郎の体势が崩れたと见てか、冴华はそこからさらに追撃の突きを打ち抜いてくる。
(こいつ、调子に乗りやがって!)
明らかに総太郎にペースを渡したくないという思いから来た奇袭だ。だが、総太郎は冴华が思うほど体势を崩してはいなかった。冴华にしては突きは工夫のないシンプルなものだったため、容易に避けると、同时に冴华の腕を脇に抱えてロックする。
「あ、ま、まずっ……!」
今度は総太郎が冴华を捕まえた。そして、冴华の腹に膝蹴りを打つ。
ドスッ!
「ひぐっ! ……ん、のおっ!」
ガシッ!
「ぐふっ!」
膝蹴りを腹に叩き込まれながらも、冴华も反撃の膝蹴りを総太郎の脇腹に入れてくる。
「くそっ、こいつ、さっさと倒れろっ!」
「こっちの台词よ! いくら殴ったと思ってるの、しぶとすぎるのよ、あなたはっ!」
二人は互いのしぶとさを忌々しげになじりながら、脚を止めての打撃戦を始める。
そこからは泥仕合気味になってゆく。互いに早く相手を倒したいという意识が强く、ガードなどの受けの行动が弱くなる。
総太郎の蹴りが冴华の太ももを打ち、同时に冴华の拳が総太郎の胸板を打つ。
「がっ!」
「あうっ!」
二人同时によろめくが、どちらも倒れはしない。完全に互角の展开だが、総太郎は危机感を覚えていた。
(くそっ、あまりクリーンヒットをもらうのはまずい、今の冴华の拳は重い! せっかく接近戦やってるんだ、こうなったら乱戦に乗じて秘法封じを狙うかっ!)
冴华がふいに钩突きを放ってくる。それに合わせて抜手を出そうとする総太郎だが――寸前で思いとどまる。
(いや、ダメだ!)
もう秘法封じは当たらないと思っていいだろう。狙いに行けば手ひどいカウンターを食らうことは间违いない。
にわか仕込みの新技は得意技よりも打つときに余裕が必要だ。それが今や见出だせない以上、结局、もはや真っ向胜负をするしかないと総太郎は结论を得る。
(いいだろう、分かりやすくていい。秘法込みのあいつの力を、正面から破ってみせる)
秘法も含めて冴华の力なのだ。総太郎は今こそ、正面から打ち破るつもりでいた。
打撃戦が続き、互いにもつれたタイミングで、どちらからともなく互いの手を握り合って力比べの展开となる。
「ぐうううぅっ……!」
「あああああぁっ!」
二人とも手に力を込めて相手を押し倒そうとするが、互いの力は互角で、二人の腕は动かない。
が、次第に冴华の表情が辛そうに変化してゆき、汗もぽたぽたと頬から垂れてくる。
「かはっ!」
冴华はついに耐えかねたように総太郎に蹴りを打ち、手を离してバックステップする。
総太郎は违和感を覚えながらも、追撃に移る。
(これは、まさか……)
试合は长引いている。しかも、冴华は前回と违い、途中から全开で秘法を使ってきている。
秘法封じが入ったときから展开は互角となり、冴华が无理をしなければならない场面も増えていた。
(限界が来たのか?)
だとすれば、ここは决めるチャンスだ。秘法を込みで倒そうという覚悟を决めてはいたが、别の要因で秘法が使えなくなったとなれば、それはそれでペースを掴むことができるかもしれないのだから都合はいいに决まっている。
回复される前に诘めねばなるまい。そう思い、総太郎は前に出て圧力をかける。
「うりゃあっ!」
気合を入れ、矢継ぎ早に连打を放ってゆくが、冴华はただ逃げるだけだ。総太郎の间合いを嫌って横にステップしてゆく。
「逃がすかっ!」
この机を逃してはいけない、と総太郎は追いすがる。
さすがに冴华も兎脚法なしで逃げられはせず、総太郎は冴华を道场のコーナー付近へと追い込む。
「うっ……」
「追い诘めたぜ、冴华っ!」
さすがに冴华も余裕がなく、総太郎を油断なく见据えながら、どう切り抜けるか考えを巡らせているようだった。
総太郎はじりじりと间合いを诘めてから、ラッシュをかけにいく。
「せえぇいっ!」
気合とともに重い突きを连続で放つ。冴华はそれらをなんとかさばきつつも、追い诘められているためにフットワークで逃げることができず、あからさまにやりづらそうにしている。
「こっ、こいつ、调子に乗って!」
「悪いが、ここで决めさせてもらうぜっ!」
総太郎は必死で前に出ながら、冴华の脚をローキックで痛めつける。ローキックという技はモーションが小さくカウンターを合わせにくい上、相手の戦闘能力を削ぐのに适している。こういう追い诘めたときには特に有効な攻撃だ。
もちろん、冴华はなにをしてくるか分からない。総太郎はあくまで慎重に、腕をはじめ防御はしっかり固めつつローキックを打ってゆく。
「あうっ! くっ……!」
冴华もガードしようと脚を上げるのだが、それでもローキックを受けるたび苦闷の表情を浮かべ、苦痛に喘ぐ。
フットワークを杀しておくことは重要だ。兎脚法を持つ冴华が相手となれば尚更である。
「うぅ……」
冴华が顔をしかめ、脚を震わせているのを见て、総太郎はようやく思い切った攻めに出る。
まず、刹涡冲にいくと见せかけてから蹴りのフェイントを入れる。ローキックで打たれていた冴华は、それに反応して脚を上げてしまう。
その状态で素早く动けるはずもない。総太郎はすかさずスムーズな足运びから左の刹涡冲を放つ。
「はあぁっ!」
ガードされたとしても、冴华の体格ならば弾き飞ばせる。この位置ならば壁に叩きつけられて大きなダメージを负うはずだ。
胜负どころと见て、思い切って决め技を缲り出しにゆく総太郎。
だが、冴华はふいに体を沈み込ませる。
「うっ!?」
刹涡冲の轨道が読めているとしか思えない动きだ。総太郎の拳が打ち抜く线上から体をずらしながら沈み込み、そこからなにか技を出そうとしているのが分かる。
「せやああぁぁっ!」
「し、しまっ……!」
冴华の脚が、すさまじい势いで総太郎の侧头部へとムチのようにしなりながら放たれる!
ガシッ!
「がはぁっ!」
クリーンヒット。ハイキックが完璧に入ってしまった。
どうやら燕撃斧のように上方向に打ち抜く动きに、腰のひねりを组み合わせたハイキックであったようだ。スピード、威力ともに申し分のないものだった。
「や、やったっ!」
冴华が胜利を确信したような、喜悦に満ちた笑顔を浮かべる。それで当然であろう、そのくらい致命的な一撃であった。
「诱いだと见抜けなかったようね! 绫子さんほどに使えないけれど、あたしもわずかな时间なら视力强化ができる。ここ一番であなたの技を见切るために、温存しておいて正解だったわ」
やはり――と総太郎は思ったが、后の祭りだ。
冴华も死に体であることは间违いなかったであろう。が、それを悟られていることを计算に入れて総太郎を诱い込み、カウンターを决めたのだ。残された力を振り绞るような、秘法の使い方だった。
「あ、ぐ……」
がくがくと総太郎の脚が震える。ハイキックは総太郎の三半规管を揺さぶり、なにより前への踏み込みにカウンターで合わされたのだ、打撃の强烈さは推して知るべしである。さすがに意识が一瞬飞びかけた。
だが――
(た……倒れるわけには、いかないっ!)
これまでの稽古、そして胜负の场面がフラッシュバックする。姫乃や优那との胜负、味わった屈辱、そして凉子をはじめ、かつてのライバルたちと竞い合いながら、自分を高めてここまでたどり着いたのだ。
その积み重ねを、无にするわけにはいかないのだ。その意地が、総太郎の脚をギリギリのところで支える。
「う……おぉっ!」
総太郎は无我梦中で、突きを缲り出す。
「なっ!」
冴华は惊いたように后ずさった。
「い、今ので倒れないの? まさか、すごい手応えだったのに!」
信じられないといったような顔。
冴华の顔に、初めて恐怖の色が见えた。それが総太郎の心を奋い立たせる。
冴华は追撃をしてこなかった。しなかったのではなく、できなかったのであろう。冴华も脚が震えてほとんど动けないでいるのが分かる。
前に出るしかない。総太郎は限界を迎えつつある体を必死に前に运ぶようにして、踏み込む。
(もう、ごちゃごちゃ考えてられない。やれることはひとつだけだ……)
総太郎の体はほとんど自动的に动いているかのようにスムーズだった。右で踏み込みながら左で体を押し付けるように拳を打ち、左足が着地したと同时に左前方へとステップし、右の回し蹴り。
ガシッ!
「あっ、ぐっ!」
冴华もフットワークが死んでおり、受けるしかない。なんとか総太郎の技をガードするが、ガードの上からでも苦痛がある様子なのは明らかだ。
さらに総太郎は、小さく半歩だけ后ろに下がってからの后ろ回し蹴りを放ち――
「くうっ!」
冴华にガードさせて动きを止めたところで、ワンツーの突きで攻める。
「こ、この……こうなったら、あたしだって……!」
だが、冴华も死に物狂いの表情で応戦してくる。総太郎の突きに対してカウンターを狙い、首を小さく动かして突きをかわしながら踏み込みながらの肘打ちを当ててくる。 内容来自
ガスッ……!
「がっ……!」
胸板を打たれる。しかも、技には鋭さが戻っていた。
総太郎はさすがに惊く。先ほどまでの攻撃で、少なくとも脚は死んだはずなのだ。なのにここまで鋭く踏み込んで技を当ててくるとは。
「まだこんな动きができるとはっ……!」
「はぁ、はぁっ……ここまできて、あたしも负けるわけにはいかないもの……ここまでさせられるとは、思っていなかったけれど……」
震えていた脚が、しっかりと畳を踏みしめている。
「あたしは、昔から伝えられていた秘法とは别に、オリジナルの秘法を组み上げるための暗示法も少しは使える。前回の胜负でも、最后にそれを使わせてもらったけどね」
忘れもしない。総太郎の起死回生の反撃を溃した、あの无茶なスウェーバックの动きのことだろう。
「あれとはまた违うけれど、今は疲労やダメージを麻痺させる秘法を即席で组んだ。これで、さっきあなたを圧倒したときの动きを、あたしはまだ行使することができる」
后にどんな后遗症が出ることか。総太郎にも、その恐ろしさは察することができる。
だが、后のことなど考虑してはいられないほど、冴华も胜利への执念を燃やしているということだ。
「暗示の组み上げや组み换えは神仓流初代が使用を禁じた、いわゆる禁术だけどね……これがあたしの本当の奥の手。今度こそっ、あんたに胜ち目はないっ!」
「そんなものを持ち出していたのか。だが、そんなことを闻かされたところで、今さら俺が怯むとでも思ったか」
普通に考えれば、先ほど総太郎を圧倒したときの动きを冴华ができるというのなら、消耗した今の総太郎には胜ち目がないはずである。
だが、不思议と総太郎は负ける気がしなかった。
「せいっ!」
総太郎は构わず前に出て、気合とともに突きを放つ。だが冴华も本人の言の通り、万全の动きで総太郎の攻撃をさばこうとしてくる。
「ふっ!」
そして、その合间をぬって刚力法の乗った重い突きを返してくるのだ。
ガシッ!
「ぐっ……!」
肩口に反撃の突きを受けて、総太郎は顔をしかめる。
が、もはや构っていられない。総太郎は小さなモーションの斜打を打ちつつ、同时に冴华が连続で打ってきた突きを左腕でガード。
その次の瞬间には、右にステップしていた。その动きの无駄のなさに、冴华は目を见张る。
さらに、そこからの総太郎の蹴りと冴华の突きが交错した直后、総太郎はもう次の技のモーションに入っていた。
「な、なんてスムーズな动き……こいつ、ここにきて动きが、违ってきてる……?」
冴华は総太郎のフットワークについてこられない。
今の総太郎は満身创痍なせいであるのか、最小の力の入れ方で最大の动きをしようと、体が自然と対応しているのかもしれない。ステップは恐ろしいほどに自然で、いつ脚を踏み出したのかが冴华にも见えていない様子であった。
「な、なに、この动きはっ! み、见えない!」
视力を强化しているかどうかは分からない。が、たとえその秘法を使っていたとしても、総太郎の动きを见切ることはできなかったであろう。见てから反応していては必ず遅れを取る、そういう动きを総太郎はしている。
(この感覚――これが、柳影の极みなのかもしれない)
流れる水と化したかのように、総太郎は本能に従ってステップと打撃を缲り出してゆく。今まで体に染み込ませてきた型の动きが、理想的な形となって现れている。総太郎の胜利への执念が、そうした动きを引き出しているのだろう。
加えて――
「せいっ!」
冴华も総太郎の动きが一瞬止まったところに突きを合わせてくるが、総太郎はそれが缲り出される気配を察知して、それを受け流せる方向へと先にステップしている。结果、冴华の突きを左手で軽々と受け流しつつ、同时に、総太郎の突きが缲り出される。
「うっ!」
冴华はそれをなんとかガードするが、ガードしていては当然反撃には移れない。
(この、动きなら……できるのか、先の先、その戦い方が)
自分の动きが鋭くなるのに合わせ、神経も研ぎ澄まされているのが分かる。
あの致命打になりかねなかった蹴りを受けて、开き直ったせいなのか。総太郎は、冴华の动きを察知しつつ、先に攻撃的な动きを合わせるように动いている。
柳影の极み、そして先の先。それは両轮と言ってよいもので、どちらが欠けても今の総太郎の动きは成立し得ない。
达人との手合わせや、数々の胜负で磨いてきた総太郎の、それは成果だった。
「なっ、なんでこんなっ、う、受け流される……!」
冴华の攻撃はクリーンヒットせず、総太郎は彼女に技を当てることができている。
だが、どこかでトドメをさしにいかねばならない。総太郎もすでに限界を超えているのだ。
冴华もここにきて総太郎の覚悟を察してか、见事に技を合わせてきた。
それは奇しくも、鸟居での胜负で美耶が放ってきた、神仓流が受け継いできた突きだった。秘法の力を乗せて、まっすぐに放たれてくる。
「うりゃあああぁぁっ!」
「でやああああぁぁぁっ!」
そして、総太郎の右拳は、冴华の左腕に受け流される。
「ぐっ……!」
受け流したとはいえ、冴华の腕には相当の冲撃があったはずだ。だが、とにかくも受け流した。
総太郎の必杀の一撃をどうにかして逸らしつつ、同时にカウンターの突きを入れるために、こんな无茶な防御行动を取ったのだった。
「胜ったっ!」
冴华の右拳はあやまたず総太郎の腹へと鋭く飞んでいる。兎脚法の势いを土台にした突きだ。それが美耶の使っていた神仓流本来の技であることを、総太郎は见て察する。最后は神仓流の技で斤木流を打ち破りたいという思いが出たのだろう。
今までの冴华のものよりも鋭く速い突き。刹涡冲を受け流された直后の総太郎には、避ける余裕はない――
「……っ、おおおおぉぉぉっ!」
雄叫びを上げる。
この状况を打ち破る方法が総太郎の头に闪く。その瞬间、総太郎の体轴は左右逆に反転していた。
そして、左の掌底が冴华に向かって缲り出され――二人の腕が交错した!
ドスッ!
「が……がはっ……!」
冴华の拳が、総太郎の腹に深く突き刺さった。
梁瀬美耶が使ったものと同じ、鋭い二段突き。兎脚法の踏み込みから缲り出されたそれは、総太郎の左の突きよりも一瞬速く相手の体へと届いたのだ。
「おぐっ、うっ……」
必杀の一撃を缲り出していた総太郎は、前へと鋭く踏み込んでいた。そこにカウンターの形で冴华の技がクリーンヒットしたのだ。
総太郎の体はがくりと前へ崩れ落ちる。立っているだけでギリギリの状态だ。冴华はそして、すかさず追い打ちをしてきた。
「はああぁっ!」
冴华の膝が総太郎のボディに突き刺さる!
ドスッッ!
「がはあああぁっ!」
突きを受けたばかりのところに再び强烈な一撃。それは、総太郎がかろうじて踏ん张っていた両足から力を夺うには充分すぎるものだった。
そして、畳の上へと膝から崩れ落ちた。
「あ……ぐ……」
视界がちらつく。総太郎は、下半身のみならず全身から力が抜けてゆくのを感じていた。
互いに全身全霊を込めた一撃を缲り出していたのは明白。それが自分にだけ当たってしまった时点で、総太郎の意识の中の理性的な部分はほぼ负けを悟っていた。ただでさえ、そこまでに受けたダメージも大きく、ギリギリで戦えていたような状态だったのだ。 内容来自
「そ、そんなっ……なぜ……」
见上げると、视界には片腕を支えるようにしながらやっとの状态で立っている冴华の姿があった。彼女も満身创痍だったことが分かる。
「はぁ、はぁ……どうやったのか知らないけど、体轴が反転してたように见えたわ。けど、そこから突きが缲り出されるのが一瞬遅かった……急な方向転换に、腕がついてこなかったのかもね」
息を乱しながらも、冷静な冴华の声。彼女は総太郎のそばまでゆっくり歩いてくると、少し膝を折りたそうな仕草をしたが、それでもしっかりと両足で立って総太郎を见下ろしてきた。
「まったく、最后まで手间をかけさせてくれたけど……最终的には、あたしの技が胜ったわね」
安堵感からか、冴华の顔には笑みが浮かんでいる。
「この土坛场であんな动きができるようになったことは褒めてあげるけど、ぶっつけ本番で新しい技を缲り出したところで、そんなのがあたしが今まで磨いてきた技を上回るわけがないじゃない」
そして、冴华は総太郎に向かって人差し指を突きつけてきた。
「これであたしの胜ち! 认めてもらうわよ、斤木総太郎!」
「うっ……」
ここで负けるわけにはいかない。胜负の前に取り交わした条件で、総太郎が负けたら斤木流は解散することになる。
ここで负けるということは、総太郎が流派の长として终わってしまうことを意味する。いや、斤木流そのものが神仓流に対して完全に屈服するということになるのだ。
それを思うと総太郎は屈するわけにはいかない。だが……
「くっ、ま、まだ俺は……」
両手を畳についた状态だ。このまま両手を支えにして立ち上がろうと総太郎は试みる。
だが、両足が震えて腕にも力が入らず、立ち上がることがどうしてもできない。
「ま、负けるわけには……いかないっ……」
认めたくない一心で立ち上がろうとする。その気持ちに、しかし体はついてこなかった。
がくがくと震える両足をなんとか立たせようとして失败して崩れ落ちる、それを缲り返していると、冴华が鼻で笑ってきた。
「ふっ、无様な姿ね」
そして、何度目か、畳の上に膝をついて四つん这いの状态になると、総太郎は憔悴しきってしまっていた。
「がはっ、はぁ、はぁっ……」
もはや、立ち上がる力は残っていないのだ。そのことを悟ると、悔しさが胸に満ちてくる。
「う、うう……だ、ダメなのかっ……」
がっくりとうなだれる。必胜を期した浑身の一撃が届かなかった时点で、総太郎の戦う力はすでに失われていたのだ。
そんな総太郎を见下ろして、冴华はようやく笑みを漏らした。
「ふふっ……やったわ。ここまできて打ち破られたなら、さすがにもう负けを认めざるを得ないようね」
そして、冴华はふいに総太郎の体を乱暴に蹴飞ばした。
「ぐはっ!」
蹴飞ばされて大の字に横たわった総太郎。その胸板を冴华が乱暴に踏みつけた。
「ぐっ」
「あたしを倒すために顽张って顽张って、必死にここまでたどり着いたっていうのに、结果はやっぱり返り讨ち。あたしを倒すために重ねてきた努力が全部无駄に终わっちゃって、さぞ悔しい思いをしてるでしょうね。ふふっ」
今回は间违いなく、今までの冴华との胜负の中で最も胜利に迫っていた。だが、それでも彼女には届かなかった。
多くの人の助けを得て、総太郎は强くなった。しかし、それを上回る実力を冴华は见せつけ、こうして総太郎を踏みつけて见下ろしてきている。
始めから、格闘家としての才に差がありすぎたのではないのか。格の违いを见せつけられたような絶望感を味わわされて、総太郎はうめく。
「ううっ……く、くそっ……」
やるべきことをやって、最高の舞台を整えた上で挑んだ决戦。それだけに、この败北は今まででも特别に悔しいものだった。
男としての悔しさならば、今までも同等のものを味わっていた。だが、今日のものは格闘家として、自分の限界を思い知らされたようなものだ。絶望感は今までで最大のものがあった。 copyright
「さあ、はっきりと自分の口で负けを认めなさい。あたしを见上げながら、悔しさを噛みしめるようにしてね。ほら、まさか认められないってことはないでしょう?」
そう迫ってくる冴华。総太郎は、冴华の均整の取れたスレンダーな体を见上げながら、その言叶を口にする。
「お……俺の、负けだ……」
その瞬间、総太郎の目尻に涙が渗む。
この屈辱感は终生忘れることはないように思えた。冴华の体重を胸板に感じながら、総太郎は冴华が言ったように悔しさを噛みしめる。
それを见下ろして、冴华はニヤニヤと笑った。
「そう、その顔。あたしはあんたが心から絶望した、そういう顔を见たくて格闘技を続けていたようなものなのよ。ふふ……満足だわ」
冴华はぐりぐりと総太郎の胸板を踏みにじる。そうされるたびに、総太郎のプライドがすり溃されてゆくかのようだった。
「あ、あううっ……」
「だからもっと早くあきらめればよかったのよ。どうせあたしには胜てないんだから」
そう言って小さく舌を出す冴华。なまじ可怜な容姿をしているだけに、胜ち夸られてしまうと屈辱感も大きい。
だが、胜ち夸らせておくことしか今の総太郎にはできなかった。
やがて、冴华は踏みにじることに満足したのか、ふっと息をついて一歩体を引く。
「さあて、あなたを屈服させたら絶対にやっておきたいと思っていたことがあるのよね。斤木流の当主としての完全な败北を味わわせてあげるわ」
そう言って冴华は道场の脱衣所に引っ込むと、何かを抱えてすぐに戻ってきた。
それは総太郎にも见覚えがあるものだった。古い一枚板のそれは――斤木流道场の看板だった。
「どうして、それを」
端正な顔にニヤニヤと笑みを浮かべている冴华。総太郎に返すつもりで持ってきたのではないことは明白だ。
そして、総太郎は冴华が何をするつもりなのか悟った。総太郎の心を折るために、そして自分が気持ちよくなるために、この场で斤木流の负けをこれ以上ない形でつきつけようというのだ。
冴华がなぜ今の今まで斤木流の看板を保管しておいたのか。考えてみれば、いつ処分しようが彼女の胜手であったろう。
それは、このときのためであったのだ。
「ま、待っ」
冴华の鋭い蹴りが一闪し、看板は空中で乾いた音を立てて真っ二つに割けた。
そして、床に落ちた板をさらに足刀で踏みつけて粉砕する。冴华の足元でバラバラに砕けた斤木流道场の看板を见て、総太郎は呆然とする。真の意味で斤木流が神仓流に、そして総太郎が冴华に屈した瞬间であった。
「これで斤木流はこの世から消灭したわ。少なくとも、あなたを当主とした斤木流はね。今の光景を目の当たりにすれば斤木総吉もさぞ悔しがるでしょうね、最高の気分だわ」
愉悦に満ちた笑みをたたえ、うっとりと状况に酔っているような様子の冴华。ここまで胜ち夸られ、踏みにじられても、负けた総太郎には何もできない。
格闘家としての夸りを蹂躙されるがままでいるしかないのだ。やがて、悔しさよりも絶望感が上回り、自分の中から急速に闘争心と気力が消えてゆくのを感じる。
(俺はついに、こいつには及ばないのか……あれだけやって駄目なら、もう、何をしても胜てない……)
一度として冴华に胜つことができなかった自分の不甲斐なさに、格闘家としての自分はここが限界なのだろうと思わされる。今日は自分の実力以上の动きを缲り出せた感覚もある。その上で负けたのだから、どうしようもなかった。 本文来自
「もう逆らう気力もなくなったみたいね。とはいえ、あなたは何度叩いてもしつこく立ち上がってくる男だし……斤木流の解散を约束させたと言っても、流派と関係なくあたしへのリベンジを志して挑んでくるかもしれない」
冴华は、総太郎は再起する可能性がまだあると感じているようだ。
「この机会に、もうどうあっても逆らえない立场にしてやるしかないわね」
「……これ以上、俺をどうする気なんだ……?」
「まあ、まずはひとつ、こっちの方でも格の差を思い知らせてあげる。あなたはまた、自分を负かした女に犯されてよがり狂うことになるのよ」
そして、冴华は着ているタンクトップに両手をかけて脱いでしまうと、スポーツブラとスパッツだけの姿になった。
「天国を味わわせてあげるわ。いえ、あなたにとってはあたしから与えられる快楽なんて地狱なのかな?」
スポーツブラとスパッツも脱いでしまい、全裸になった冴华は、倒れたままの総太郎にのしかかってきた。
冴华の引き缔まった、それでいて柔らかそうな肢体は相変わらず男の性欲をそそらせる。嫌いな相手であっても、绮丽な体であることは间违いなく、総太郎はどうしても冴华の裸を目にすると心臓の鼓动が速くなるのを止められなかった。
「さてと、じゃあ服をはだけさせて……」
冴华は総太郎の道着の前をはだけさせると、中の肌着を首元までずり上げて、総太郎の胸板まで露出させる。
そして下半身も、ズボンとトランクスを脱がせてペニスを露出させた。冴华に脱がされて、総太郎は羞耻を刺激される。负けた直后とあってはなおさらだ。
「くっ……」
「相変わらず、しっかり锻えられたいい体をしてるわね。こういう男を犯すのは、女としてたまらない优越感があるから好きなのよねー。屈服させた今だから言えることだけど」
笑みを浮かべる冴华。近くで顔を见ると、意志の强そうな瞳に射抜かれるような感覚に陥る。相変わらず整っていて绮丽な顔立ちだ。
だが、彼女がそんな可怜な少女だからこそ负けたことが悔しくもなる。体を见ても男と比べれば明らかに华奢であり、男よりも絶対に身体能力では劣るはずなのだ。それなのに、この少女に総太郎はついに胜てなかった。
「じゃ、勃起しなよ」
そう言って、冴华は総太郎のペニスの裏筋を指先でつうっとひと抚でした。
「ううっ!」
すると、総太郎自信が惊いてしまうほどに、ペニスはあっさりと膨らんでゆく。
「ふふん、相変わらずここは弱いね。格闘では手こずらされたけど、セックスは今日も圧倒できそうかな」
冴华はそう言うが、総太郎はセックスの面でも前回よりはよほど锻えられてきたはずなのだ。事実、美耶なども圧倒した上でここに来ている。
が、冴华に屈してしまったばかりということが响いているのだろう。総太郎自身、今までにも身に覚えがあることだった。女性に负けてすぐ性的なことをされると、気后れしているせいもあって性欲を刺激されることに抵抗できない。
「あなたはこれから、斤木流を灭ぼした憎い女に欲情して、精液をいっぱいぶちまけちゃうことになるのよ。気持ちよさと悔しさがいっぺんに袭ってくる感覚、今回もたっぷり味わうといいわ」
「くっ……」
「でも、前回とは少し趣向を変えるけどね」
そして、冴华はゆっくりと顔を近づけてくると、そのまま総太郎の唇を夺った。
ちゅうっ……
「むぐっ……!」
唇を重ねられた瞬间、総太郎の心臓が激しく脉打った。
心地のいい柔らかな唇の感触。嫌いな女相手のキスなど、普通に考えればいい気分になるはずもないのだが、冴华の唇は恐ろしく男の情欲に诉えかけてくる感触をしていた。
「う、うう……」
「ふふっ……」
そのまま、冴华は右手で、総太郎のペニスをそっと握り込むと、上下に刺激してくる。
しゅっ、しゅっ……
「ぐっ、むぐっ、うっ……!」
强くもなく弱くもなく、絶妙な强さの手コキ。それを、キスの感触と同时に味わわされる。
とても冴华の责めとは思えない、心地よさで男の感覚を痺れさせるような性行为だった。総太郎の鼓动はどんどん加速してゆき、唇に伝わる冴华の暖かな唇の感触も相まって、体の感覚が快楽に堕ちてゆくのが分かる。 本文来自
(う、ううっ、そんな……こんな、心地いいイかされかたをしちまうのか……)
苦痛を伴う射精を强いられるよりも、それはある意味では抵抗があった。冴华の责めで心地よくなどなりたくはない、そう思っていたが、彼女の责めに耐えることはできず、どんどん射精感を高められていってしまう。
ちゅっ、ちゅうっ……
「んぐっ、うっ、んううっ」
キスの感触が総太郎の意识を惑わせ、性的な快楽を加速させてゆく。
そして、そのまま手コキをされ続け、ついに……
しゅっ、くにっ、くにゅっ……
「むぐっ、うぐううぅっ!」
びゅくっ、びゅくっ……! びゅるっ、びゅっ、びゅううっ……
「ぐっ、うっ……」
射精の快感に総太郎の体はがくがくと震える。射精感が顶点に达しそうなタイミングでちょうど亀头を揉むように刺激され、见事に絶顶させられた。総太郎の体の快感を完全に把握しているかのようなタイミングだった。
心地のいい絶顶に、総太郎は屈辱と快楽が相半ばする感覚の中で身闷えしていた。いまだ、意识には抵抗の気持ちが残っており、冴华から与えられる快感を心地よく感じたくないと思っている。
だが、そんな抵抗も――
「ん、んっ……」
にゅるっ……
「う、うぐっ……」
射精の余韵によって体が快楽でしびれるようになっている総太郎。そこに、冴华はついに舌を総太郎の口内に滑り込ませてきた。
柔らかく吸い付くような冴华の舌が総太郎の舌に络みつき、激しく刺激してくる。
じゅぷっ、れろっ、にゅるっ……ちゅっ、ちゅぷっ、じゅるっ……
(あ、あぁ……な、なんだ、こいつのキス……舌から体に痺れが伝わっていくみたいで、体の力がどんどん抜けていく……)
抵抗の気持ちが失われてゆくようだ。もともと胜负に败れた时点で気力のほとんどが失われていたが、残っていたかすかな闘志も消えていってしまう。
前回の、无理やり犯して精液をすべて搾り取るような、苦痛をともなく性行为とはまったく违っていた。
(そもそも、こいつとキスすることになるなんて……)
今まで冴华からは何度も性的な责めを受けたが、キスだけはされたことがなかったのだ。それは彼女が総太郎を嫌っていることの証であろうと思われたが、しかし、胜负のついた今ならばやってもいいということなのだろうか。 copyright
そして、ディープキスをしながらリズムよく冴华が手を动かしてくる中、総太郎の射精感は再びあっさりと限界を迎えてしまう。
「ぐっ、むぐううぅっ!」
びゅくっ、びゅるるっ……!
「ぐっ、うっ……」
二度、三度と精液を喷射するたび、総太郎の体も揺れる。冴华と舌を络ませ、唇の柔らかさを味わわされながらの射精は、信じられないほどの心地よさがあった。
(あ、ああっ……心地よすぎる……けど、こんなっ……)
ディープキスで増幅された性感の中での射精、その余韵が体中に伝わってゆくのを感じて震える総太郎。
が、そのタイミングで冴华が突然、総太郎の舌を激しく攻め立ててきた。
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅるっ、ちゅううぅっ!
「んぐっ、ううっ!」
びゅっ、びゅくっ! どびゅうっ、びゅっ、びゅるっ……
「ぐっ、あっ、ああああぁぁ……」
総太郎は舌と唇の粘膜を责められて、あっさりと连続射精に追い込まれた。射精の余韵に浸っていた中の连続射精はあまりの快感で、総太郎は両目がひっくり返ったようになり、だらしなく缓んだ表情になってしまっている。
そんな総太郎の顔を见下ろして、冴华はゆっくりと舌を引き抜き、唇を离す。
「ふふっ……あんたをぶっ倒した手で败北汁いっぱい出させるの、すっごい楽しい? 情けないイキ顔を见るのもいい気分だし、やっぱあんたとエッチなことするの结构好きだわ」
冴华の端正な顔にかすかな兴奋の色があり、それがまた総太郎の心臓の鼓动を加速させる。先程まで杀気をぶつけ合っていたことすら忘れてしまいそうなほど、総太郎はなぜか冴华の姿に魅力を感じてしまっていた。
「キス程度でこんなにとろけちゃうなんて、案外だらしないわね。まあ、负けたせいで弱気になっているからこそなんだろうけど。あたしが植えつけた女性恐怖症も、すっかりぶり返したみたいね」
冴华に负ければぶり返す。それは前回もそうだった。
そして、今回は凉子に癒してもらっても回复することはないのではないか。なぜか确信的に、総太郎はそう感じた。
「手コキだけで精液绞り尽くしちゃうのももったいないし、このくらいにしといてあげる」
「はぁ、はぁ……」
冴华はなおも右手でペニスをさするようにして弄んでくるが、射精はさせないように弱い刺激だけにとどめているようだ。が、その柔らかな手の刺激で、総太郎はじわりとした快感を覚え、身动きが取れなくなる。
小さく刺激を与え続けることによって、総太郎が万が一にも反抗することを封じているのだ。この性の技术ひとつを见るだけでも、性行为では格闘技以上に胜ち目がないことが分かる。
「じゃ、挿れるよ」
ペニスの上にまたがり、腰を落とそうとしてくる冴华。どうやら、もうセックスを始めるようだった。
上から迫ってくる、冴华の均整の取れた裸体。抱きしめればさぞ心地良い感触が味わえるのだろうと思う。そして、ペニスを饮み込もうとしている膣も、极上のものであることを総太郎はすでに思い知らされている。
快楽の予感に胸は高鸣るが、冴华にこれ以上快楽を味わわされてしまっていいのかという抵抗感が総太郎にはまだ残っていて、素直に冴华との行为を受け入れられるはずがなく、その思いが顔にも出ていただろう。冴华は総太郎の顔を见て、ふっと笑った。
「あのキスも充分心地よかったはずだけど、まだあなたは堕ちてはいないみたいね。ま、これまでのことを考えれば当然かもだけど……少しぐらい抵抗の気持ちが残っていたところで、あたしとのセックスの前では全部无駄よ。あなたは今から、本当の意味で堕ちることになる」
そして、冴华はひとつ舌なめずりをすると、ゆっくりと腰を落としてきた――
ずっ……ずちゅうううぅっ……
「くっ……あ、あああぁぁ……!」
温かで、刺激の强い膣肉。それがペニスを饮み込んでゆき、膣壁とペニスとが擦れ合う感触が走る。
柔らかなヒダによって强めに抚でられる感触は、総太郎の今の忍耐力で耐えられるようなものではなく、あっさりと絶顶させられてしまう……!
びゅくっ、びゅっ……どぷっ、びゅくっ……! 内容来自
「うあっ、あっ、ああぁっ!」
「あはっ、まだ全部入ってないのに射精しちゃってるんだ。さすが、早漏だけはどう顽张っても治らなかったみたいね」
それだけは、性行为で锻えても完全には治癒しなかった、おそらくもともとの総太郎の体质なのだった。今までどれだけ、それが女性との胜负で灾いしたことか。
冴华はかさにかかって早漏を嘲笑してくるかと思われたが、意外にもそういう雰囲気ではなかった。
「でも気にすることないわ。早くても数がこなせるなら问题ないんだし、その点ではあなたはとても优秀だし」
「え……」
「あたしも膣内に射精される感覚は嫌いじゃないしね。今日は、あたしもたっぷり気持ちよくさせてもらうわよ」
そして、ペニスは冴华の膣の一番奥まで挿入された。
ずちゅうううぅっ……
「は、はうぅっ……」
びゅくっ、びゅるっ……
一番奥にペニスが到达するまでに、さらにもう一度射精。総太郎は甘い快楽に体を小さく震わせる。
これで、冴华の恐るべき膣にペニスが完全に囚われてしまった。どう扱おうとも冴华次第、彼女がその気なら総太郎を壊すまで解放することもないだろう。
「くうっ、うっ……」
冴华の膣内はほどよい缔めつけで、総太郎のペニスには常に温かな圧迫感がかかっている。
「気持ちよさそうだねー。ま、神仓流の房中术では自由自在に膣圧を操るのは基本みたいなもんだし、今までの経験であんたが気持ちよく感じる膣圧も把握してるから、今はすっごく心地いいはずだよね」
事実、ペニスに伝わる膣肉の感触の具合のよさに体を震わせるばかりで、言叶を発することすらできない。このまま冴华が一切动かずにいるだけでも、そのうち射精してしまうことだろう。
(き、気持ちよすぎるっ……こいつの膣、どうなってるんだ……本当に、俺にちょうどいい缔めつけの强さを完璧に把握しているんだ)
それが把握できていたとして、その强さを完璧に保てる冴华の技量の寻常なものではない。
「斤木流にも性技ぐらいあるでしょうけど、それを身につけることができていたとしても、この状况じゃどうしようもないわよね」
「ううっ……」
「さて、手始めにひとつイかせてあげる。えいっ」
可爱らしく両脇を缔めて胸を强调するポーズをしながら、冴华は膣を一瞬、强く缔めつけた。
ぐにゅううぅっ……!
「あ、ああああぁぁぁっ!」
どびゅうううぅっ! どぷっ、びゅくっ、びゅるっ……!
「ひぐっ、あっ、あぐううぅっ」
背筋を反り返らせ、激しく絶顶する総太郎。络みついた膣肉がペニスを强烈に缔め上げて、精液を激しく喷出させる。
美しい丸みを帯びた冴华のおっぱいや、彼女の端正な顔を见上げながらの一方的な射精は、総太郎に强い屈辱感と败北感をもたらした。
(だ、だめだ、かなわない……俺はこのまま壊されるしかないのか……)
快楽とともに、恐怖が総太郎の心を侵食してゆく。それを察したのか、冴华は苦笑しながら体を前倾させ、総太郎に顔を近づけてきた。
「怖がっちゃってるみたいね。ま、今のはほんの挨拶っていうか、あたしの膣の具合のよさを味わってもらいたかっただけだから安心しなよ。ここからは本当に优しくしかしないからさ」
そして、冴华はそのまま総太郎に体を重ねるようにして密着してくる。柔らかな胸が総太郎の胸板に当たり、男の本能を刺激してくる。
「こうやって抱き合いながらセックスしたら、とっても気持ちいいと思うんだよね。あたしもこういうのは初めてだから楽しみかも」 内容来自
冴华はそう言いながら総太郎の首の后に両手を回し、しっかりと抱きついてきた。もう少し近づければ再びキスしてしまえるほど、顔も至近距离だ。
そのまま、冴华は腰を动かし始める。
ずっ、ずちゅっ、ずぷっ、ずっ……
「くうっ! あ、ああっ!」
「ふふふ、あんたのおちんちんの热が伝わってきて、悪くない気分だよ。男とのセックスを楽しむってのは初めての経験だけど、これは気持ちよくなれそう」
冴华は、完全に支配した男相手でなければセックスを心から楽しむことができないのではないか。快楽に染められた意识の中で、総太郎はおぼろげにそんなことを思った。
そして、男とのセックスを楽しみながら、総太郎の心を屈服させようとしてもいる。なぜこの行为でそれができると思っているのかは分からなかったが。
(前回みたいに、俺の心を折るセックスをすればいいだけなんじゃないのか。どうして冴华は、今さらこんな优しいセックスをしようとしているんだ……)
分からなかったが、考えても无駄なことではある。総太郎は冴华の行为に流されるしかないのだ。
冴华は小刻みに腰を上下に动かしていただけだったが、次第に様々な方向に动かし始め、グラインドもしてくるようになる。
ぐちゅっ、ずっ、ずぷっ……くちゅうっ、ずちゅっ……!
「うあっ、そ、そんな动きをされたら……あ、ああっ!」
どぷっ、びゅっ、びゅるっ……
「ふ、ああぁっ……」
グラインドで味わわされたペニス全体への刺激に耐えられず、総太郎は絶顶する。冴华に抱きしめられ、その体温と柔らかみを味わわされながらの射精は、素直に男としての幸福感を覚えるものだった。
(こ、こいつとのセックスで、こんな気持ちよくなっていていいのか……)
せめて不快に感じ続けるべきではないのか。だが、冴华の感触や匂いにさらされ続け、そして间近に见る整った顔立ちを见つめていると、だんだんと可爱らしく感じられてきてしまう。
「また絶顶してくれたみたいね。まあ、あたしにかかれば当然のことだけど」
目から敌意が感じられなくなっている。こんな视线を彼女が向けてくるなど、思ってもみなかったことだ。
「ほら、そろそろまたイっちゃうんじゃない? 远虑せずに、あたしの中でいっぱい気持ちよくなるといいわ」
「くっ、あっ、ああっ!」
「どうせなら、乳首もいじってあげようかな。えいっ」
冴华は両手の指で、総太郎の乳首を强くつまんで小さくひねる。その絶妙の力加减で、総太郎は乳首から全身に弱い电気が走ったかのような感覚を味わわされる。
「うっ、こ、これは……」
「で、乳首つまみながら、思いっきりイかせてあげる。膣を缔めて、と」
ぐちゅううぅっ!
「うあっ、あっ、ああああっ!」
びゅっ、びゅくっ! どぷっ、びゅっ……
びくっ、びくんっ……
「ひぐううぅっ……!」
「あはっ、すっごい気持ちよさそう。男もやっぱり、乳首をいじられたら気持ちいいわよね。どう? 全身が快楽で痺れちゃうみたいでしょ」
「は、はうぅっ……はぁ、はぁっ……」
「ふふっ、満足してくれたみたいね。あたしもなかなか気持ち良かったわ。総太郎は相変わらず、おちんちんは优秀ね」
ひとしきり総太郎の精液を搾り取ってみせてから、冴华は喘ぐ総太郎を満足げな笑みを浮かべながら见下ろした。
「格闘でもこっちの方でも、あたしを満足させてくれる男はあなただけかもしれない。これなら本当に、あなたをあたしの元に迎えてもいいかもね」
そう言って、ついで彼女は甘い声をかけてきた。
「総太郎。あなたは今日ここで、あたしと婚约しなさい。あたしの婿になって、神仓家の一员になるのよ」
「え……」
思いもかけないことを言われ、総太郎は混乱する。
「それが一番自然なこと。もともと神仓と斤木の家はひとつだった。あたしたちが结婚することで元に戻すべきなのよ」 内容来自
结婚。冴华がそんなことを持ちかけてくるとは、総太郎はまったく想像したこともなかった。
「ど、どうして……お前は、俺のことを憎んでいるはずだろう」
「憎んでいたわよ。でも、どっちかというと憎いのはあなたの父亲のほうだったし」
いったん言叶を切って、冴华は柔らかな视线を向けてくる。
「あなたのことは、屈服させて叩き溃してやる、としか最初は思っていなかったけど……あなたは努力によって格闘家としての実力をどんどん上げてきたし、今では斤木流の奥义を身につけていて自らの流派を知悉してもいる。神仓と斤木がひとつになるにあたって、あたしの婿としてあなた以上に相応しい人间はいないと今は感じているわ」
评価してくれている。おそらく、総太郎が完全に败北した今だからこそ、冴华も口にする気になったことなのだろう。そうでなかったら一生言わなかったであろう言叶が冴华の口から次々に纺がれてくる。
「あなたがあたしの元に来ることで、神仓流は完璧な流派となり、初代の顷の力を取り戻すことになるでしょう。それを、あなたも见たくはない?」
兴味がない、といえば嘘になるだろう。
だが、结局は神仓に斤木が吸収されることになるのであり、本来それは受け入れがたいことだ。
それでも、総太郎はそもそも嫌とは言えない。负けた自分には抵抗することはできない、そんなあきらめの気持ちがある。
「见たくないと言っても、どうせお前はそうするんだろう……」
「そうだけど、できれば纳得して受け入れて欲しいんだよね。まあ、これから最后の仕上げをするから、それが済めば自分から结婚してくれって言ってくるようになるだろうけど」
この上、どんな责めを味わわせようというのか。今日の冴华の责めは心地よいものばかりで、総太郎の心のどこかにはこれからの行为への期待があった。このままなすがままになっていたらどうなってしまうのか、前回の苦痛をともなう责め苦とは违った恐怖がある。
「あたしの奴隷夫になって、一生を神仓流のために尽くしなさい。それがあなたの、败者としての运命よ」
「うっ……」
やはり冴华はただ総太郎を好きになって结婚を持ちかけてきたわけではないのだ。しかし、ろくでもない运命が待っていそうなことは分かるが、冴华の美しい瞳に见据えられて、総太郎は心臓の鼓动が高鸣るのを止められない。
そして、冴华は顔を近づけ、そのままキスをしてきた。
ちゅうぅっ……
「むぐっ、うっ……」
びゅくっ、びゅっ……
キスの瞬间、その唇の感触の柔らかさだけで総太郎は兴奋が一瞬で高まり、射精してしまった。先ほどのキス手コキと、その后のセックスの心地よさによって総太郎はすっかり冴华の责めに弱くなってしまっていて、ことにキスにはまったく耐えられない状态にされていた。
(うう……こいつのキス、なんでこんなに心地いいんだ……)
冴华の体の感触、そして甘い匂い。それを味わわされながらのキスは信じられないほどの心地よさがあった。冴华が相手でなければ素直に贪る気になっていたであろう快楽だ。
そして、唇を重ねながら、冴华は小刻みに腰を动かし始める。
ずっ、くちゅっ、ぬちゅっ……
「むっ、うっ、んううっ」
ペニスに伝わる柔らかな膣肉の刺激。唇と性器と、そして抱きしめられていることで体の感触とも相まって、まさに全身で冴华の体を味わわされているのだ。
もはや冴华への今までの感情は雾散し始め、もっと彼女との性行为を楽しみたいと感じてきている。このまま快楽を味わわされ続ければ、必ずそうなってしまうだろう。
分かっていても、総太郎はそれを止めることができなかった。
「んぐっ、うっ……」
ちゅっ、ちゅうっ……ちゅぷっ、れろっ、じゅぷっ……
唇をねぶって、その柔らかさを味わわせながら、ゆっくりと舌を络めて粘膜の感覚を伝えてくる。
络み合う粘膜が痺れたような感覚になり、その微妙な性感が総太郎の全身に染み渡ってゆく。そして、全身の性感帯がジンジンと痺れてきたタイミングで、すべてを把握しているかのように冴华はペニスを刺激してくるのである。
ぐちゅっ、ずっ、ずぷっ……ずっ、ずちゅっ……
「う、ううっ……んっ、むうっ、ぐっ……」
そして、総太郎の射精感が高まってきたところで、冴华はペニスを膣の一番奥まで饮み込みながらゆっくりと绞めつけてくるのだった。
くちゅううぅぅっ……!
「んううううぅぅっ!」
どびゅるるるっ! びゅくっ、びゅっ、どぷんっ……!
びくっ、びくんっ……
「んぐっ、うっ、うあぁっ……」
射精の快楽が全身を突き抜け、キスによって心地よい性感に浸された全身は、さらに快楽が増幅されてゆく。
优しく、柔らかに射精に导かれてゆく感覚。体中が最高の快感に包まれていて、いつまでもこの快楽に浸っていたいと思わされる。もはや、総太郎の表情はだらしなく缓み、冴华の体をぎゅっと抱きしめながらキスを贪欲に求めるようになっていた。
(な、何も考えられない……もっともっと、冴华とセックスして、キスし続けていたい……)
そして、そんな快楽を味わわされ続け、さらに三度ほど射精してしまうと――総太郎はもうすっかり冴华の虏となってしまっていた。
长かったキスをやめて冴华が顔を离すと、総太郎は缓んだ顔に寂しげな色を见せた。
「あ、ああ……も、もっと、もっと続けて欲しいのにっ……」
「そう思ってくれるのは嬉しいわ。でも、そろそろ悦ばせてあげるのも终わりにしないといけなくてね。みんなを待たせてしまっていることだし」
そういえば、お互いの弟子たちはどうしているのだろうか。だが、少し考えを巡らそうとしたものの、すぐに総太郎は冴华とのセックスで头がいっぱいになってしまった。
「う、うう……ま、まだ、セックスをっ……もっと、射精したい……」
「ふうん、まあいいわ。お望み通り、最后に一発、思いっきり射精させてあげる。これでもう、さすがのあなたも射ち止めになると思うけどね。えいっ?」
そして、冴华は膣を缔めつけてくる!
にちゅううううぅぅっ!
「ひっ、ひぎいいいいぃぃっ……!」
びゅくっ、びゅくっ……びゅっ、びゅくっ、どぷっ……
「あっ、あひいいぃっ……き、きもちいいっ、きもちよすぎてっ、あ、あああぁぁ……!」
総太郎はなおも絶顶し続ける。冴华の膣肉はペニスに络みつきながら绞めつけ続け、そのおかげで総太郎のペニスは絶顶し続けてしまうのだった。
そして、そのままペニスが精液を冴华の膣内に吐き出し続け、もはや何も出なくなると、総太郎の快楽はさらに强くなる。ドライオーガズム状态で絶顶し続けることにより、今まで味わったことのない快感が间断なく袭ってきているのだ。
にちゅっ、ぐにっ、ぐにゅううぅっ……!
「うあっ、あっ、あああああぁぁ!」
びくっ、びくっ……
体を痉挛させながら、涙とよだれをだらしなく垂れ流し、総太郎はこの世のものとは思えない快楽に浸り続ける。
そして、冴华がようやく膣の力を抜いたときには、総太郎は体を完全に弛缓させ、呆けた顔を晒しながら冴华を见上げるだけだった。
「あ……ひ……」
快楽の余韵で痺れる体。もう思考もまともに働かないような状态だが、それでも総太郎の目は冴华の美しい裸体に钉付けになっている。
その冴华は、総太郎を见下ろして愉快そうに笑みを漏らした。
「ふふ……どうやら、ようやく仕上がったみたいね。これであなたは完全にあたしのものよ、総太郎」
いつの间にかポニーテールが解けて、茶色がかったロングヘアを垂らしている冴华。肩にかかったその髪を背中に送る仕草をすると、见事な丸みをしたおっぱいが小さく揺れた。
「さあ、どうかしら? 総太郎、あたしとの结婚を受け入れてくれる? もし受け入れてくれたら、今日ぐらいの快楽をたまには味わわせてあげてもいいんだけどねぇ」
そう言われて、もう拒めるような総太郎ではなかった。
「す、する……」
「え?」
「け、结婚する……俺を、冴华の夫にしてくれ……」
この快楽を失うことなど、もう考えられない。胜负に完败し、もはや冴华にはかなわないという意识があったことも手伝って、総太郎は完全な屈服宣言となるそれを口にすることに抵抗がなかった。
総太郎の口からその言叶を闻いて、冴华は愉悦の表情を浮かべた。
「ふっ、ついに堕ちたわね。分かっていたことだけど、セックスであなたを屈服させるのは格闘胜负で胜つことよりもよほど简単だったわね」
冴华は安堵と満足感が入り混じったような顔でひとつ息をつくと、総太郎に再び小さくキスをした。
ちゅうっ……
「む……んぐっ……」
短いキスだったが、総太郎は大きな喜びを感じる。どうやら、自分が心から冴华に屈してしまっているということをおぼろげに感じるが、それ以上のことはもう考えることができなかった。
冴华はやや嗜虐的な目をして、総太郎にささやきかけてくる。
「あなたはこれから、世界で一番嫌いな女の子と结婚しなくちゃいけないの。一生、自分からすべてを夺った憎い女のために尽くすのよ。それが、あなたがあたしに屈服した代偿。流派の技はもちろん、あなたの人生を丸ごとあたしに捧げてもらうわ。夫なんだから当然よね」
そう言いながら、冴华は総太郎の頬を抚でる。
「あたしは男を爱することはないから、夫となる男が嫌いな相手だろうと问题ないわ。世间体と、それに后継者を作るために必要っていうだけの存在だしね。ま、あんたなら练习台っていう役目も果たせるし、そういう意味ではそこらの男よりは価値があるけど」
これからのことを彼女が语るに及んで、ようやく総太郎は自分が口にした言叶がどれほど絶望をもたらすものであるか、理解できてきた。
だが、もう何もかも遅く、また、この运命を避けることはおそらくできなかった。総太郎は冴华の与える快楽に抵抗する気力も、また性技の実力もなかったのだから。
「心配しなくても、家事とかは分担してあげるから。奴隷夫とは言っても、神仓流を本格的に広めていくには総太郎の存在は必要不可欠だから、それなりに遇してあげるわ」
そして冴华は立ち上がり、総太郎のペニスを踏みつけた。
「あ、うう……」
「顽张ってくれれば、ちゃんとご褒美もあげる。こうやって、ね……」
ペニスをゆっくりと踏みにじる冴华。その行为に、総太郎はもう痛みとともに心地よさを感じてしまう。
(俺は、もう……冴华には、逆らえない……)
そう理解しながら、総太郎は再び体を震わせ、小さく絶顶する。
こうして、総太郎は神仓冴华に完全に屈服した。长きに渡ったライバル同士の戦いは、総太郎が一度たりとも冴华に胜てないまま终结し、斤木流は神仓流に吸収する形でその歴史に幕を闭じることとなったのであった。
冴华は総太郎の惨めな姿を见下ろしながら、喜びに体を震わせた。
「ついにあたしと神仓流が、斤木流に対して完全胜利したんだわ。これで母さんの无念も晴らせたし、あたしにとっての最高のハッピーエンドね。ふふっ……あははははははっ!」 内容来自
道场の中に冴华の胜利の高笑いが响き渡り、それを闻きながら、総太郎の意识は闇に落ちていったのだった――
精彩评论